菅義偉総理が就任後初の訪米で、ワシントンDCへ降り立ったちょうどその頃。東京・元麻布の中国大使館に、朝日、読売をはじめ大手新聞6紙と、通信社の論説主幹や解説・論説委員長が集結した。

 「中国駐日大使の孔鉉佑氏が昼食会を開いたのです。16日の菅総理訪米にぶつけるとは露骨ですが、いい取材の機会でもあるから、各社は招待に応じました」(全国紙政治部デスク)

 会合では、大使館付きの一流シェフが焼き上げたステーキが供された。話題は当然、日米首脳会談に向かう。翌日に発表される予定の共同声明に、中国批判が盛り込まれることが既定路線とみられていたためだ。

 だが孔大使は、会談については「危機感を持って注視しています」と多くを語ろうとしない。さらにウイグルの人種問題に話が及ぶと、「フェイクニュースだ」と不機嫌そうに切り捨てた。

 その一方、流暢な日本語で滔々と語ったのは、ある政治家との関係だったという。

 「河野太郎(行政改革担当大臣)さんです。『私は河野さんとは20年来の付き合いだ。下っ端の書記官だった時、訪中をアテンドしたのが懐かしい』『彼は総理になれますか? 』と、一転して上機嫌になった。ある社の幹部が『なれるんじゃないですか』と合いの手を入れると、破顔したといいます」(全国紙外信部デスク)

 菅総理の「一世一代の大舞台」のウラで、わざわざ河野氏を「未来の総理」と持ち上げた孔大使の狙いは何だったのか。自民党ベテラン議員が言う。

 「訪米前、菅総理は中国と太いパイプを持つ二階(俊博)幹事長のみならず、財界からも『中国を刺激しないでほしい』と要請されていました。それを受けて米側に働きかけていたのですが、バイデン大統領に蹴られてしまった。孔氏の話は、米側の説得に失敗した菅総理に対する当てつけでしょう」

 中国からの強烈なメッセージを、菅総理はどう受け止めただろうか。

 『週刊現代』2021年5月1・8日号より
5/2(日) 6:31
https://news.yahoo.co.jp/articles/6ca7f32982723075b3f0a4252a8ecc2af45cb937