https://news.yahoo.co.jp/articles/da55ea06d3b6bbb33d40e2fac9bc5691259ef3ee
 SNSを通じ、個人間で精子がやりとりされている。不妊に悩む夫婦や同性カップルらが、人工授精に使うためだ。人工授精を規制する法律はなく、日本産科婦人科学会の指針に沿って特定の医療機関で不妊治療として行われてきた。ただ、個人間で精子が取引される事態は想定されておらず、専門家からは「何らかの法整備が必要」との指摘が出ている。(川崎陽子)

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 「費用なし、秘密厳守で個人情報のやりとりはありません」――。ツイッターには「#精子提供」「#精子ドナー」などのハッシュタグ(検索ワード)が付いたアカウントが300件以上並び、こんな投稿があふれている。ここ数年で急激に増えた。

(写真:読売新聞)

 東日本に住む会社員女性(31)は、SNSを通じて精子提供を受け、最近女児を出産した。

 結婚して間もなく、夫が無精子症で子どもができないと分かった。医師からは、「第三者の精子で行う人工授精(AID)」や養子縁組を提案された。夫は、生まれてくる子が妻とだけでも血がつながっていることを望み、AID治療を決心した。

 だが、医療機関の順番待ちは1年。「妊娠は時間との闘い」と、並行してSNSで提供者(ドナー)を探した。昨春、コロナ禍で待っていたAID治療が無期延期となったため、SNSで提供を受けることにした。

 血液型が夫と同じの男性1人と数回面会。感染症の検査結果を見せてくれるなど、信頼できる人となりで決めた。男性の名前は今も知らない。女性は「将来娘に明かすべきか、葛藤はある。でも精子をもらったおかげで、この子に会えた」と話した。

 医療機関では長年、AID治療で使う精子は医学生らから匿名で提供を受けてきた。しかし近年、生まれた子が出生の経緯や遺伝上の親を知る権利が注目され始めたため、匿名性が保てずにトラブルになる懸念があるとして、提供者が減少。治療を休止する医療機関が相次ぐ。海外のような精子バンクも国内にはない。

 一方、晩婚化などを背景に、AID以外を含む不妊治療や検査を受ける夫婦は年々増加。5・5組に1組に上り、不妊の半分は男性側に問題があるとされる。また、子を望む同性カップルや、結婚せずに子を産み育てる「選択的シングルマザー」もおり、提供精子への需要は高まっている。


(略)