https://news.yahoo.co.jp/articles/a5fab3ece0ba3d4b4379fec7723fd7a8f985f8c1
北の政治的な意図

南北首脳会談のふたり

 北朝鮮は今月6日、体育省が運営するホームページを通じて東京五輪に参加しないと発表した。新型コロナウイルスから選手を保護するためという理由だったが、東京五輪を南北、米朝対話の場にしようと目論んでいた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の計画に大きな狂いが生じている。再考を促すべく北の説得に動き出したという韓国政府の決して実らない北への「こじらせ愛」と、中止に追い込もうとしていた東京五輪を自らの政治的成果のために逆に利用しようとする大統領の思惑についてレポートする。

【写真】平昌五輪で金与正と

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 文在寅大統領は先月1日の三一節記念演説で、「東京五輪は韓日、南北、そして朝米間の対話の機会になる」「韓国は東京五輪の成功開催のため協力する」と発言。

これまで韓国が推進してきた南北合同チームや南北合同入場などを引き続き模索し、東京五輪を「第二の平昌(ピョンチャン)五輪」にするという構想を述べたばかりだった。

 北朝鮮の夏季五輪の不参加は冷戦下で行われた1988年のソウル五輪以来33年ぶりで、一部の専門家はコロナではない政治的な意図があると解釈する。

 梁茂進(ヤン・ムジン)北韓大学院大学教授は「表向きはコロナ感染から選手を保護するためというが、五輪参加は実益がないと判断し、また、制裁延長など日本の北朝鮮を敵視する政策に対する政治的反感も作用している」と分析した。
「まだ何も進んでいない」

 一方、6日付のAFP通信によると、国際五輪委員会(IOC)の報道官が「北朝鮮五輪委員会(NOC)から義務免除(五輪不参加)の公式申請書を受けていない」と述べている。IOCの加盟国は五輪憲章に則って大会に参加する義務がある。IOC報道官は、「NOCと状況を話し合うため、数回電話会議を要請したが、不可能だった」と明らかにした。

 韓国政府は、北朝鮮の東京五輪への不参加が完全には決定されたものではないため、説得次第で参加する可能性があると考えている。
 
韓国統一部のスポークスマンは、北朝鮮を説得したい旨を明らかにしたが、具体的な説得については、「まだ何も進んでいない」と明かしている。諦めてはいないようだが、ハードルは高そうだ。

 何よりも韓国政府は、今回の決定が北朝鮮の相次ぐ軍事挑発や韓国を侮辱する発言で南北関係が冷え込んだ中で出されていることを踏まえ、北朝鮮が五輪を放棄する本当の理由を見極めるべきだろう。

 文大統領が北朝鮮の東京五輪参加を切望する理由は、南北関係と米朝関係を改善させる手段が他にないことだ。

東京五輪は、任期が残り1年余りとなった文大統領が公約に掲げた「韓半島平和プロセス構築」「北朝鮮の非核化と統一」を進める、最後にして最大の機会である。

来年の大統領選挙は、実質的には今年下半期から開始される。劇的な南北間の対話促進を、5年間の任期のレガシーにしたいと考えていても不思議ではない。
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(略)