「女性活躍を主張すればリベラル、左翼と批判される。いつの間に日本はこんな不寛容な社会になってしまったのでしょうか」

 元防衛大臣の稲田朋美衆院議員(62)といえば、憲法改正、靖国問題などで積極的に発言する保守政治家と知られてきたが、ここにきて思わぬ逆風に晒されている。自民党内で女性活躍を推進するなかで「保守」を自称する言論界や団体から事実上締め出されてしまったというのだ。

 きっかけは、2年前に同期当選の仲間とともに議員連盟「女性議員飛躍の会」(以下、飛躍の会)を立ち上げたことだった。

「『飛躍の会』の立ち上げから現在まで、私のもとに届くのは、『失望した』『左に転向したのか』という批判や罵倒の嵐。ある程度、覚悟はしていましたが、日本の政治に対する意識がいかに遅れているのかを身をもって感じ愕然としています」

「自民党の責任に他なりません」

 行動の背景には、男性優位の政治が変わろうとせず女性議員が全く増えない危機感があった。

「長く政権与党にあった自民党の責任に他なりません。私が初当選した2005年の郵政解散選挙では16人の女性議員が初当選しました。女性でも能力があれば議員になれるし、この調子で女性議員は増えていくだろう。女性枠を設けるのは間違っている――そう考えていましたが、甘かった。この16年間で衆議院における自民党女性議員は、増えていないどころか5人も減っています」

 稲田氏は、女性議員を増やすためにも憲法を改正すべきだと語る。

一定数を女性に割り当てる「クォータ制」を

「まず候補者の一定数を女性に割り当てる『クォータ制』を導入する。候補者の割合を当面30%、将来的に35%の法的義務を政党にかける。よく誤解されるのですが、議員数ではなく、あくまで候補者数の割合を法律で規定するというのがポイントです。もちろん不適切、力のない候補者は、投票によって落選します。ただ現憲法下でのクォータ制導入は、法の下の平等を定めた憲法14条に抵触する恐れがあります。そのため憲法14条の一般的男女平等条項に加え『国会議員及び公職へのアクセスは男女とも平等にすべき』『政府は今ある男女の不平等を解消する責務がある』といった実質的男女平等をうながす事項を書き込むのです。憲法に政府の責務として実質的な男女平等が明記されることによって、日本社会の硬直した空気をがらっと一変させられると信じています」

 自民党内で女性活躍に入れ込む稲田氏を心配する声も多いという。昨年9月に退任した安倍前首相もその一人だ。

「ひとり親問題を皮切りに、婚前氏続称などの問題に入れ込む姿を見て、私のコアな支持層である保守系の支援者が離れるのではないか。政治家稲田朋美にとってよくないのではないかと心配してくださっています」

 発売中の月刊「文藝春秋」4月号および「文藝春秋digital」掲載の「女性差別反対はサヨクですか」で、稲田氏は「未婚のひとり親控除」「婚前氏続称制度」といった現在取り組む政策の他、森喜朗元首相の女性蔑視発言の所感、女性活躍にとりくむ契機となった大きな挫折経験も明かしている。

文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/44369