国連の女子差別撤廃委員会が日本政府に送った見解の文書を外務省が内閣府男女共同参画局に報告せず、2年以上も放置していたことが23日、参院の特別委員会の質疑で分かった。国連は女性が旧姓を維持できる法改正などを勧告後、見解で追加の情報提供を求めてきたが、内閣府の有識者会議にも報告されないまま、昨年12月に第5次男女共同参画基本計画が策定された。

 参院の「政府開発援助等に関する特別委員会」で高良鉄美議員(沖縄の風)が質問。茂木敏充外相は経緯を認めたうえで「内閣府と迅速に共有すべきだった。国民の知る権利の観点からも問題だ」と答弁した。

 日本は1985年に女子差別撤廃条約を締結。締約国は、差別撤廃のための措置をとることが求められており、日本政府はこれまで、国内の実施状況について8回報告した。2016年、女子差別撤廃委員会による日本の審査が行われ、見解で選択的夫婦別姓の法改正などを勧告され、勧告を実施するために取った措置を2年以内に提出するように求められていた。これに対して、日本は18年3月にフォローアップ報告を提出した。

 国連は同年12月17日付で、さらなる行動に関する情報の提供を求める見解を外務省に送ったが、これが公表されず、高良事務所が昨年9月、同省から文書を取り寄せた。この際、同省は「英文の公表も仮訳の予定もない」としていたという。同事務所が今月15日、内閣府に問い合わせたところ、外務省が文書について内閣府に報告していなかったことが判明。内閣府は同省から報告を受けて翌16日、ホームページ上で英文を公表した。

 外務省女性参画推進室は、「当時の担当者が報告しなかった理由は調べたが、分からなかった。仮訳も速やかに公表したい」。内閣府総務課は「まだ届いていないか問い合わせなかった責任は内閣府にもある」としている。(杉原里美)

朝日新聞
2021年3月23日 15時43分
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