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バイデン米政権のブリンケン国務長官とオースティン国防長官が、政権発足後初の外遊として日本と韓国を訪問し、それぞれの国で外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)に臨んだ。

【画像】肘タッチで握手を交わすブリンケン国務長官と茂木外相

歴代米政権で国務長官の最初の訪問地にアジアが選ばれるのは異例で、バイデン政権が「最も重要な競争相手」と位置付ける中国に、同盟強化で対抗する意図が込められていた。アメリカにとってはインド太平洋地域に中国包囲網を形成するための布石となる外遊だったが、両高官を迎えた日韓両国では協議は対照的な結果に終わった。
日米では中国を名指し批判

まずは3月16日に東京都内で開かれた日米2プラス2。

会談後に発表された共同文書では、中国を名指しして「ルールに基づく国際体制を損なう(インド太平洋)地域の他者に対する威圧や安定を損なう行動に反対する」と批判、日米が連携して中国に対峙していく姿勢を鮮明にした。

また、中国海警局の武器使用権限を明確化した海警法への深刻な懸念と共に、沖縄県・尖閣諸島の防衛に日米安保条約5条が適用されることを改めて確認した。過去の日米2プラス2では中国を名指しすることはなく、中国への警戒感を前面に打ち出した形だ。

北朝鮮については「北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認」し、安保理決議の義務に従うよう求めた。また、拉致問題の即時解決についても必要性を確認した。
「中国」「非核化」抜きの米韓共同声明

一方、その翌日にソウルで開かれた米韓2プラス2。共同声明の中味は、日米の発表とはあまりにもかけ離れていた。アメリカにとって最優先事項のはずの「中国」と「北朝鮮の非核化」の文字が抜け落ちていたのだ。

「域内の安全保障環境への挑戦が高まるなか、韓米同盟が共有する価値は、ルールに基づく国際秩序を損ない、不安定にするすべての行為に反対するという、両国の公約を支えている」

「韓米は平和と安定を維持し、合法的取引を妨害されず、国際法を尊重するという両国共同の意志を強調した」

「韓米は、韓国の(東南アジアに向けた)新南方政策での連携・協力を通して、自由で開かれたインド太平洋地域を作るために、共に協力していく決意を再び強調した」

いずれも中国を念頭にしたと見られるが、名指しは避けている。中国を刺激したくない韓国の意向が反映された結果だ。

中国は韓国の最大の貿易相手国であり、簡単には逆らえない相手だ。かつて地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備をめぐって、中国に事実上の経済制裁をかけられ大打撃を被ったトラウマがある。北朝鮮の後ろ盾でもある点を勘案すれば、中国の機嫌を損ねたくないのが本音だ。

北朝鮮についても日米2プラス2での「北朝鮮の非核化」という表現はなく、「北朝鮮の核・弾道ミサイル問題が同盟の優先関心事であることを強調し、この問題に対処し、解決するという共同の意思を再確認した」にとどめた。

北朝鮮が「非核化」を論じる際、その対象を「朝鮮半島」としている。米国の「核の傘」の撤廃も求めており、北朝鮮だけが非核化することに反発しているためだ。そのため「北朝鮮の非核化」は、北朝鮮を刺激すると考える韓国側の意向が反映され、回避された。

バイデン政権は現在、トランプ政権時代の北朝鮮政策の見直しを進めている。ただ「北朝鮮の非核化」を目指す方針は揺るぎなく、米韓2プラス2では両者の違いが際立った。
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(略)