去年5月、緊急事態宣言の最中、賭けマージャンをしていた問題で刑事告発され、起訴猶予になった東京高等検察庁の黒川弘務元検事長について東京地方検察庁が検察審査会の「起訴すべき」という議決を受けて再捜査。今度は一転して、賭博の罪で略式起訴することが14日までにわかった。黒川氏とともに賭けマージャンをしていた産経新聞記者2人と朝日新聞元記者は、不起訴となる見通しだ。

 安倍政権時代、官邸の「守護神」と呼ばれた黒川氏。安倍晋三氏が首相の座から去った後も、黒川氏を「法律顧問」などと重宝していた菅義偉首相の影響力か、不起訴となっていた。

 だが、昨年12月に出た検察審査会の「起訴相当」の判断は重かった。黒川氏は起訴猶予処分とされたが、賭けマージャンでカネを賭けていたことは検察の捜査でも立証されていた。起訴しない理由は「金額が少ない」というものだった。

 だが、1円でも賭ければ、賭博となる。長く、検察の幹部だった黒川氏への“温情”ともみられる判断に対し、検察内でも異論が出ていた。検察幹部は苦しい胸の内を打ち明ける。

「再捜査して、検察が不起訴としても再度、検察審査会が起訴相当となれば、強制起訴されてしまう。黒川問題で検察の信頼は地に落ちたので、自らの手で処分すべきとの判断でしょう。罰金刑なら、ほとぼりがさめれば、黒川氏は弁護士になる道も残りますから……」

 そんな中、もう一人、2月24日付で「起訴相当」と議決された人物がいた。自民党の衆院議員、元経産相の菅原一秀氏だ。菅原氏は、2017〜2019年にかけて選挙区内の有権者に枕花名目で生花18台(計17万5000円相当)を送ったり、秘書に命じて自己名義の香典(計約12万5000円分)などを渡したりしたとして、公職選挙法(寄付の禁止)違反容疑で告発されていた。

 20年6月に不起訴処分(起訴猶予)となっていたが、東京第4検察審査会は「起訴相当」と議決した。

菅原氏への捜査は、衆院議員で元法相の河井克行被告の公職選挙法違反事件と同時期にされていた。克行被告は、参院議員を辞職に追い込まれた妻の案里氏(有罪確定)とともに逮捕。

 菅原氏も克行被告と同じカネのバラマキであり、犯罪事実は認められたにもかかわらず、起訴猶予処分となっていた。こうした検察の「えこひいき」的な判断には、大きな疑問があがっていた。

 菅原氏の検察審査会の申立書では、以下のように計画的、常習的な手口を訴えられていた。

<秘書は、常に「菅原一秀」という文字が印字された香典袋を持ち歩き、選挙区内の有権者の逝去の情報を秘書が入手すると、「香典はいくらですか?」とLINEで尋ね、指示された金額を香典袋に包んで、秘書が代理持参していた>

<秘書に選挙区内の有権者に関する逝去の情報を収集させ(しかも、その情報を入手し損ねると、「取りこぼし」とされて秘書は罰金をとられる)、報告を受けて秘書に金額を指示して香典を持参させていた>

 それが検察審査会の「起訴相当」の判断につながったのだ。菅原氏の検察審査会の申立代理人の元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士はこう話す。

「河井夫妻と菅原氏の事件の根本は同じ構図です。河井夫妻はやるが、菅原氏は目をつぶってと検察が裏で政権と取引でもしていたんじゃないかと思いたくなる。黒川氏の場合も、起訴猶予だったが、犯罪事実は検察の捜査で確定していた。起訴相当の議決が1度でも出れば、アウト。菅原氏も起訴猶予ですが、検察審査会は起訴相当の判断。検察はまさに大恥をかいた。検察は黒川氏と同様に菅原氏を起訴する道を選ぶのではないか」

 自民党幹部はこう愚痴る。

「年内に衆院は解散、確実に選挙はある。すぐ菅原氏を議員辞職させて無所属で選挙に出してもいいのではないかという声もあった。しかし、4月25日投開票の衆院と参院補選、参院広島選挙区の再選挙、どれもが厳しい。3月15日までに菅原氏が辞めれば、同じ日程になるので、現実的じゃない」

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週刊朝日
2021.3.14 11:34
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