民間職員、就労を“違法指導”

 コロナ禍の下、「最後のセーフティーネット(安全網)」として、その役割が改めてクローズアップされる生活保護制度ですが、民間委託によって受給を抑制する仕掛けが大阪市で問題となっています。生活保護受給者が支援によって就職し、保護廃止となった場合、1人当たり6万1111円を委託料に加算する―。大阪市が民間企業に委託する「総合就職サポート事業」の特約条項です。大阪市の資料によると、同市では「成果」に応じて企業に「報酬」が支払われる仕組みが存在します。(速水大地)

 大阪市が生活保護受給者などを対象に行う「総合就職サポート事業」は、2011年度に開始。派遣大手パソナなどの民間企業に業務を委託しています。各区にある保健福祉センターに派遣された民間職員は、利用者への就職アドバイスや履歴書の書き方を教えるなどの業務を行っています。

維新の市政下

 特約条項によると、同支援によって、▽受給者が就職し、生活保護廃止になった場合▽保護申請中の人が就職し、受給に至らなかった場合―に1人当たり6万1111円が委託料に加算されます。また、職場に定着した場合は、さらなる加算も。逆に、支援を受けた人の就職率が50%未満であれば、基本委託料から割合に応じた減額があります。

 大阪市によると、19年度の同事業による就職者数は2732人、保護廃止件数は146件。特約条項に基づく加算額の合計金額は1674万9797円です。(表)

 「成果」に応じて「報酬」が上がったり下がったりする仕組みは、生活保護受給者への管理強化や、意に反する強引な就職支援につながりかねません。実際、民間職員が「何でもいいから(求職活動を)」と強要したり、「求職活動をしなければ、保護が受けられなくなる」などの強い言葉で、利用者に実質的な「指導」を行ったりする事例も報告されています。


 全大阪生活と健康を守る会連合会の大口耕吉郎会長は「生活保護で被保護世帯を『指導』できるのは福祉事務所のケースワーカーに限る。民間職員が『指導』するのは違法であり、極めて危険だ」と指摘し、「維新市政になって、稼働年齢層に対する就労指導が厳しくなっています。法的にも逸脱しています」と話します。

企業に丸投げ

 市の担当課によると、大阪市は、何人就職したかという数字の把握のみで、民間職員がどのように対応しているかは把握していません。

 大口氏は「企業に丸投げして、後は知らぬ存ぜぬの状況が続いている。適切な支援のために、社会福祉士など専門資格を持つケースワーカーの増員は必須。そのために国は生活保護費用負担を75%から100%にし、自治体の負担軽減を図ることも必要です」と話します。

 政府は、生活保護のケースワーク業務の外部委託方針を19年12月に閣議決定しました。これには公的責任の縮減や、保護受給者への管理強化などさまざまな問題点が指摘されています。コロナによる失業が増え、生活保護利用者の増加が予想される今、立ち止まって見直すことが必要です。

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しんぶん赤旗 2021年1月28日(木)
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