安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭を巡る問題。東京第一検察審査会は1月4日付で、安倍氏を「不起訴」にした東京地検特捜部の処分を「不当」とする市民団体の審査申し立てを受理した。

「公設第一秘書の略式起訴で捜査が終わったことに対し、市民団体の代表は『秘書が勝手にやったことで知らなかったとの供述は到底信用できない』などと訴えました。ただ、検審に舞台が移っても、安倍氏本人が立件される可能性は低いでしょう」(司法担当記者)

なぜか。実は安倍氏のバックには“最強ヤメ検軍団”がついているのだ。

「弁護を担うのは、大阪高検検事長などを歴任した伊丹俊彦弁護士(1980年検事任官)です」(同前)

 最高検総務部長だった2010年、大阪地検特捜部の証拠改竄事件の捜査を担当した伊丹氏。大阪高検検事長の就任会見では「(司法の変化や国民の要請に応じられるような)不易流行の大阪高検でありたい」と抱負を述べていた。座右の銘は「不退転」だという。

「退官後の16年から、長島・大野・常松法律事務所顧問に就任。保守的な論調で知られる北國新聞社の監査役も務めてきました。堅実な弁護手腕には定評があります」(同前)

 伊丹氏は事務所を通じて「取材には一切お答えしていません」と回答した。

佐川氏の補佐人も務めたもう一人の“ヤメ検”

 安倍氏の弁護にはもう一人、これまで政治案件を数多く手掛けてきた“ヤメ検”が携わっている。

「熊田彰英弁護士(98年検事任官)です。森友問題では佐川宣寿氏が証人喚問された際、補佐人だった人物。“官邸の守護神”黒川弘務元東京高検検事長が元上司で、黒川氏も当時『彼は優秀だから』と語っていた。木村拓哉主演のドラマ『HERO』の監修も手掛けていました」(社会部デスク)

熊田氏は、14年秋に明るみに出た小渕優子経産相(当時)が後援者を観劇会に格安で招いた問題の弁護も担当していたが、

「小渕観劇会と桜前夜祭は同じような構図です。小渕氏が閣僚辞任に追い込まれたのを受け、国会炎上を避けたい安倍氏側も14年から不記載に手を染めたと見られる。ただ、小渕観劇会では元秘書が有罪判決を受けたとはいえ、熊田氏の手腕もあって、小渕氏の立件は見送られました。安倍氏にとって、この問題を知り尽くした熊田氏の存在は心強かったはずです」(同前)

 さらに、熊田氏は日産ゴーン事件では検察との間に立って、元秘書室長の司法取引をサポートしていた。

「桜疑惑でも検察と安倍氏側の“談合”が指摘されますが、熊田氏にはその“実績”があるのです」(同前)

“最強ヤメ検軍団”を味方に復権を目論む安倍氏。検審の受理にも余裕の表情を見せているという。

文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/42850