自民党衆院議員だった吉川貴盛元農林水産相(70)=北海道2区、議員辞職=が大臣在任中に大手鶏卵生産会社前代表(87)から現金を供与された疑いがある事件で、現金の大半は前代表の給与から捻出されたとみられることが13日、関係者への取材で分かった。
 前代表が吉川氏に対し、農水相の就任前後を含め数年間に計1800万円を提供した疑いがあることも判明。東京地検特捜部は、このうち大臣在任中の500万円が職務に関する賄賂に当たると判断し、近く吉川氏を収賄罪、前代表を贈賄罪で在宅起訴する方向で検討している。
 関係者によると、大手鶏卵生産会社「アキタフーズ」(広島県福山市)の前代表は、吉川氏ら農水行政に力を持つ「族議員」と呼ばれる国会議員を中心に現金を提供。昨年7月の特捜部などによる同社への家宅捜索後、周囲に政治家への現金提供を認めた上で「自分の金なのに(配って)何が悪い」などと話していた。
 吉川氏への提供分を含む現金は、基本的に自身の給与から出し、手持ちがなく会社の資金から一時的に借り入れた際も、後で給与から穴埋めしたと説明したという。
 前代表は鶏卵業界のリーダー的存在で、日本養鶏協会の幹部も長年務めていた。吉川氏への現金提供の際、ストレスを減らす環境で家畜を飼育する「アニマルウェルフェア(動物福祉)」に基づく国際基準案が、日本の業者に不利にならないよう要望するなどしたとみられており、特捜部の任意の取り調べに対し現金提供を認め、「業界のためだった」などと話している。

時事通信
2021年01月14日07時16分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021011301195&;g=soc