米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、政府が辺野古沿岸部への土砂投入に踏み切ってから14日で2年がたった。県の試算では、土砂投入の進捗しんちょく率は埋め立て予定区域全体の3.8%で、県は新基地阻止をあきらめていない。沖縄戦の激戦地で、多くの遺骨が残る本島南部からも埋め立て土砂を採取する計画を防衛省が打ち出したことに、市民も反発を強めている。(山口哲人)

 現在、防衛省が埋め立てているのは辺野古南部の2区域。2018年12月に土砂投入を始めた区域(約6ヘクタール)では埋め立てが完了。19年3月に始めた隣の区域(約33ヘクタール)で必要な土砂量の約6割が投入された。ただ、全体の埋め立て区域面積は約152ヘクタールで、軟弱地盤が見つかり水深も深い辺野古北部の埋め立てには着手できていない。
 玉城デニー知事は14日、「工事を止めることや話し合うことは決して手遅れではない」と、新基地阻止の姿勢を改めて示した。
 軟弱地盤が判明したことを受け、防衛省は4月に設計変更を県に申請し、埋め立て土砂の採取地に本島南部の糸満市と八重瀬やえせ町などを追加した。南部は先の大戦で犠牲になった戦没者の遺骨が今も残るとされ、今後の埋め立てで遺骨まじりの土砂が使われる可能性がある。
 公益財団法人・沖縄県平和祈念財団分室によると、県全体で2849柱の遺骨が見つかっていない。18年度に新たに収骨された18柱のうち、14柱は糸満市で見つかった。同市の「ひめゆりの塔」や、散乱した遺骨が集められた「魂魄こんぱくの塔」の周辺では11、12両月、収骨に取り組むボランティア団体の具志堅隆松代表らが新たに遺骨を掘り起こした。
 具志堅氏は本紙の電話取材に「遺骨が残り、人々の血を吸い込んだ南部の土砂で辺野古の海を埋め立てる行為は、戦没者や遺族への冒瀆ぼうとく以外の何物でもない。新基地に賛成か反対か以前に、人道上の問題だ」と非難する。
 岸信夫防衛相は11日の記者会見で、遺骨混入の恐れがある土砂を埋め立てに使うことに関し、「関係機関の連携の下、遺骨に配慮して事業が営まれる」と述べ、計画を推進したい考えを示した。

東京新聞
2020年12月15日 07時48分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/74280