17日に営まれた故中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬を巡っては、1億円近い国費の支出や、政府が全国の国立大などに弔意の表明を求める通知を出したことが、不適切だとして識者や野党から批判された。政府はいずれも問題ないと強調するが、説明の根拠は明確ではない。

 政府は合同葬の経費として、2020年度当初予算の予備費から9643万円を充てる。当初は約8270万円を見込んだが、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策を理由に約1400万円増やした。経費は自民党と折半し、総額は2億円弱に上る。

 内閣府によると、政府が合同葬に経費を支出する法的な根拠はない。

 06年の故橋本龍太郎、07年の故宮沢喜一両元首相の合同葬は、約7700万円の国費を支出した。今回が高額との批判に対し、加藤勝信官房長官は「過去の先例などを総合的に勘案して執り行う。必要最低限の経費だ」と反論した。

 合同葬に当たり、文部科学省は13日付で、全国の国立大などに弔旗の掲揚や黙とうで弔意を示すよう求める通知を出した。都道府県教育委員会にも「参考」として文書を送付した。

 加藤氏は15日の記者会見で、通知は強制力を持たず、教育基本法が禁じる特定政党の支持には当たらないと強調。思想・良心の自由を保障した憲法19条との関係についても「弔意を表明するかどうかは関係機関が自主的に判断する。内心の自由を侵すものではない」との見解を示した。(中根政人)

東京新聞
2020年10月17日 23時58分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/62558/