2020年09月21日07時09分

 旧民主党で幹事長を務めた輿石東元参院副議長がインタビューに応じ、立憲民主党が政権交代の選択肢となるには明確なビジョンを打ち出し、国民の高揚感を創り出す必要があると指摘した。主な発言は次の通り。
 1年近くかかってようやく150人の大きな固まりができた。国民の間には、民主党以来の離合集散の過ちを繰り返すのではないかとの厳しい見方もあり、どう乗り越えていくかが問われている。旧国民民主は分裂したが、割れること自体がおかしい。原発政策一つを取ってみても、党の理念や政策についてきちんと議論を重ね、一致点を見いだせていなかったのではないか。
 当初、立憲の枝野幸男代表は党名や政策でかたくなな面があったが、大きく門戸を開き、合流に向けて努力した。党や組織は「顔合わせ」ができても「心合わせ」ができなければ「力合わせ」につながらない。力を合わせ、政権の選択肢を提供できるかがこれからの勝負だ。
 民主党は2007年、「逆転の夏」というキャッチフレーズを掲げて参院選で自民党を上回り、09年には「政権交代の夏」を掲げて政権を奪った。国民にも高揚感があったが、残念ながら今はそうした雰囲気がない。衆院選は1年以内にあるだろうが、この党に懸けてみようと国民が思うものを、政策的にも世の中的にも盛り上げていかなければ駄目だ。
 そのために目指す国家像や社会像を明確に打ち出す必要がある。私の言葉で言えば、「全ての人に居場所と出番のある幸せな社会」だ。自民党とはここが違う、と有権者が思ってくれなければ政権は取れない。選挙に勝てるか勝てないか、自分がどこに行けば生き残れるかを考えているだけでは、政治家も政党も信頼されないだろう。
 代表選では風通しの良い党運営が争点になった。逆に言えば、トップダウンという見方が党内にあるということだ。枝野代表をはじめ執行部はそのことを踏まえた党運営をしていく宿命がある。
 10人集まれば意見が常に一緒ということはあり得ない。民主主義社会だから、最大公約数で決めたことには従うという党内ガバナンスの文化をつくらなければ、また同じことを繰り返してしまう。
 輿石 東氏(こしいし・あずま)都留短大卒。小学校教師を経て衆院議員2期、参院議員3期。野田政権で党幹事長。16年に政界引退。84歳。

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