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 菅義偉内閣が16日、発足した。官房長官に加藤勝信氏(64)、目玉の行政・規制改革担当相に河野太郎氏(57)を起用するなど、「仕事師」をそろえた。野党側も、枝野幸男代表(56)の合流新党「立憲民主党」と、玉木雄一郎代表(51)率いる新「国民民主党」が結成された。新たな陣容で与野党が対峙(たいじ)するなか、永田町では相変わらず「解散風」が吹き続けている。夕刊フジが、選挙プランナーの松田馨氏に16日時点での政党別の獲得議席予測を依頼したところ、総裁選告示日(8日)の前回予測より、自民党は議席を伸ばしていた。果たして、菅首相は早期解散を断行するのか。

 「国民が求めているのは新型コロナウイルス感染拡大防止と経済の両立だ。まずはここに専念したい。1年以内に衆院は解散・総選挙があるので、そうした時間の制約も視野に入れながら考えていきたい」

 菅首相は16日の記者会見で、こう語った。

 あくまで早期解散には慎重な構えだが、自民党内には、菅内閣への国民の期待が高いうちの早期解散を求める声がくすぶる。

 自民党の二階俊博幹事長も「いつ解散があっても対応できるよう準備を整える。明日でも結構だ」と語った。

 永田町では、9月末や10月初旬に臨時国会を召集したタイミングで菅首相が解散する「10月13日公示−同25日投開票」や、「10月20日公示−11月1日投開票」といった選挙日程も出回っている。

 菅首相が「伝家の宝刀」を抜いた場合の議席予測の結果は別表の通りだ。投票率は62%と想定した。

 自民党は現有議席(283議席)から10議席減の「273議席」となり、すべての常任委員会で委員長を独占し、各委員会で委員の過半数を確保する「絶対安定多数」(261議席)を大きくクリアする。

 松田氏は「菅内閣はサプライズ人事がなく、やや新鮮味に欠けるが、各派閥の閣僚待機組の『在庫一掃』ではない。閣僚経験者の再任も多く、『実力者ぞろい』という好印象だ。菅首相としては『衆院解散は成果を出してから』と考えるだろうが、現有議席は、前回衆院選(2017年)で野党候補が乱立した結果であり、野党共闘が進んだ現在、次は自民党が議席を減らすのが前提だ。それでも、堅調な数字が出ている」と語る。

 連立を組む公明党は早期解散は敬遠したいのが本音のようだが、自民党の勢いに連動するかたちで、現有議席(29議席)から3議席増の「32議席」となった。

 一方の野党では、枝野代表の合流新党「立憲民主党」が15日に船出したが、自民党総裁選の話題に追いやられたせいか、現有議席(106議席)から11議席減の「95議席」。

 玉木代表の新党「国民民主党」は、現有議席(7議席)から1議席増の「8議席」となった。

 松田氏は「一般の有権者からすると、新党というが両党とも同じ政党名のままで、党代表も代わらず、新鮮味が全くない。議席予測は、共産党との選挙協力が進んだ場合を前提にしている。各種調査でも新党への期待感は薄く、これでは、新『立憲民主党』にとっては、厳しい数字だ。新『国民民主党』には小選挙区で強い議員が多く、集票力のある連合傘下の民間労組の支援も見込め、一定の比例票は獲得するとみている」と語った。

 ■前原証言、影響か

 立憲民主党には、旧民主党政権時代の2010年9月に発生した、沖縄・尖閣沖中国漁船衝突事件をめぐり、当時外相だった前原誠司衆院議員が最近、「菅直人首相(当時)が逮捕した中国人船長の『釈放』を強く指示した」と証言した問題も、選挙情勢に影響する可能性がある。

 大阪市の松井一郎市長(56)率いる日本維新の会は、現有議席(10議席)の3倍以上の「34議席」に伸ばした。

 菅首相は、松井氏とは旧知の仲で「改革姿勢」を共有している。今回の組閣でも、25年の大阪・関西万博成功に向け、万博担当相を新設した。

 松田氏は「こうした動きは、大阪都構想をめぐる住民投票を11月1日に控えた維新の弾みになり、有利に働くとみて予測した」という。

 山本太郎氏(45)のれいわ新選組は、比例で「3議席」とした。

 今回の予測を踏まえ、「選挙のプロ」は今後の政局をどう見るのか。

 松田氏は「菅首相が、新型コロナの打撃から日本経済を立て直し、雇用の回復、行政・規制改革などで手腕を発揮できれば、自民党の獲得数字はさらに上がる可能性がある。一方、今回の予測では、野党が候補者を一本化して、接戦に持ち込む選挙区が75カ所もあった。菅首相への期待が外れると、大きく減らす場合もある」と語っている。
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