昨夏の参院選を巡り、地元・広島の首長や県議に票の取りまとめを依頼、現金を渡した公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われている元法相で衆院議員の河井克行被告(57)。妻で参院議員の案里被告と迅速な判決を目指す「百日裁判」にかけられているが、克行被告は15日の公判後、弁護人の6人全員を「電撃解任」した。一体、何があったのか。

 先月25日に始まった河井夫妻の公判は、週3〜4回のペースで集中審理されてきた。カネを受け取った地元議員らの証人尋問が16日から始まる予定だったが、弁護士解任によって、裁判は後任の弁護士が決まるまで当面開けなくなる見通しだ。

 気になるのは、克行被告の「狙い」である。解任された弁護士によると、「公判が進む中で、(克行は)過密な日程では十分な防御ができないと訴えるようになった」という。加えて、逮捕から3カ月近く勾留が長引いていることも解任の要因になったようだ。

 元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏がこう指摘する。

「公判予定を一度リセットすることで、少しでも裁判を有利に進めたいのでしょう。弁護士との間で弁護方針の違いもあったのかもしれません。ただ、公判中の解任はレアケースです。今後100人近い証人の尋問が控えていることを考えると、後任の弁護士選びは難航するでしょう」

■戦略的に公判スケジュールを変更

 ところが、司法関係者の間では「出馬準備か」とウワサされているというから驚きだ。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士がこう言う。

「衆院解散が近いと言われているので、出馬の可能性はゼロではないでしょう。証人尋問が週3〜4回も行われたら、被告人は出廷しなければならず、選挙活動に専念できません。選挙活動に注力するために、弁護士を解任することで戦略的に公判スケジュールを変えたのではないか。裁判所が保釈を認めるかがポイントですが、選挙期間中に勾留を続けたら、『被選挙権の侵害』と言われかねません。河井氏が出馬した場合、保釈請求をどうするのか。裁判所は難しい判断を迫られるでしょう」

 永田町では「10月解散」「11月解散」説が出回っている。仰天のカムバックとなるか。

日刊ゲンダイ
2020/09/16 13:20
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