最後に外交・安全保障について一言申し上げておく。日米関係はわが国の基軸だ。価値観を共有する合衆国との信頼関係、それは安倍政権のもとで、平和安全法制の実現など成果を得てきた。

 在日米軍がどのようなものであるか。なぜ三沢にF16戦闘機がいるのか。なぜ横須賀に原子力空母がいるのか。なぜ嘉手納にF22戦闘機が飛来するのか。なぜ佐世保に強襲揚陸艦がいるのか。そのことをきちんと認識をしなければならない。

 そして、自衛隊と米軍の在り方、役割分担。米軍が何をやっているのかを認識しなければ、経済的な負担の分担の議論にはならない。そして、わが国でできる、自衛隊でできる(任務)、それを米軍に依拠していないかということだ。

 そして法律、装備、これは十分であるか。イージス・アショアもそうだ。イージス・アショア的な機能は必要だ。そして相手国の領域に、仮に自衛権の行使として武力を用いるとするならば、どのような手段によるべきか。そのときに日米同盟はどう機能するのかをきちんと検証していかなければ、論理の飛躍になりかねない。そういうことをきちんと見直していく。

 中国は香港に対してあのような対応をした。深刻に認識していかなければならない。一国二制度の否定だ。現状の変革を力で、ということには断固たる意志を表明していかなければならない。

 しかし同時に、中国がそのような現状の変更を力で行うことなく、安定的に成長していくためには何ができるか。中国に間違った考えを与えないために、安全保障体制はきちんと見直すということだ。

 中国の問題は、中間層が形成される前に人口が減る、高齢化が進む、そういう問題だ。それにどう対応するか。日本は、ともに何ができるかを考えていかなければならない。

 朝鮮半島については、考え方を異にするものがある。そこはきちんと主張していかねばならないが、なぜ相手がそのような主張をするのか。そのことへの理解をわれわれは十分にしているだろうか。領土にしても、歴史にしても、われわれが正しい認識を国家・国民として持っているだろうか。わが国ができることとして検証していかねばならない問題だ。

 前回の総裁選挙でも申し上げた。東京、平壌で連絡事務所を開設する。それは政府として公式に、責任をもった立場で拉致問題をどのように解決するかということに対応していかねばならないからだ。拉致問題の解決。安倍政権で実現できなかった大きな課題の一つだ。政府として主体的に取り組んでいく。

 外交、安全保障。アジアはわが国にとって必要欠くべからざるパートナーだ。われわれはアジアのことをどれほど知っているのか。歴史をどれほど知り、現状をどれほど知り、文化をどれほど知っているか。それを知らないでアジアとの連帯はありえない。将来的にはアジアに集団安全保障の仕組みを作りたい。かねてからそのように思っている。そのために、アジアに対する「理解、共感、納得」。そのこともやっていきたい。

 やらねばならないことは多々ある。自民党は次の時代のために何をすべきかを明確にすべきだ。そして国民を信じる。国民を信じない政治が、国民から信頼されるはずはない。誠実に、謙虚に、真正面から、逃げることなく諸課題を訴え、国民の納得と共感のもとに政策を実行する。それが自民党が、日本国に対して、世界に対して、次の時代に対して、課せられた責任であると私は信じている。

 国民を信じ、誠実に、率直に語れば、国民は必ず応えてくれる。それを放棄してはならない。逃げてはならない。国民を信じ、共感と納得の政治を目指す。総力を挙げて、自民党はこの時代に、積極果敢に取り組む。皆さま方のご理解、ご支持、ご支援を心からお願いして、石破茂の話を終わります。

産経新聞
2020.9.1 21:20
https://www.sankei.com/smp/politics/news/200901/plt2009010072-s1.html