健康不安による辞任説がささやかれる中、安倍晋三首相が、続投の意思を固めたことが26日分かった。首相に近い関係者が「体調も良くなっており、続投を決めたと聞いています」と話した。首相は28日に、通常国会閉会翌日の6月18日以来となる記者会見を首相官邸で開き、自らの病状を説明した上で、9月の早い段階で内閣改造を行う考えを表明するとみられる。

 首相は17日と24日の2度にわたって東京・信濃町の慶応大病院に通院。首相は「検査」であることを強調したが、永田町では重病説が流れた。何しろ首相には、参院選で歴史的惨敗を喫した後の2007年9月に持病の潰瘍性大腸炎の悪化を理由に電撃辞任した苦い過去がある。それだけに、今回も首相周辺では「再び辞任するのでは?」との臆測が広がっていた。

 潰瘍性大腸炎は原因不明の指定難病で、本来は外敵に対して働く免疫システムが自分の大腸を異常に攻撃し、腸の粘膜に潰瘍やびらん(ただれ)ができる病気。患者は国内に約22万人いるとされ、首相も17歳の時に発症した。根治することはできず、一度発症すると寛解と再燃を繰り返すやっかいな病気だ。

 通院時の首相の病状について、官邸に近い関係者は「持病が悪化してステロイド治療があまり効かないようになっている」と明かした。医療ジャーナリストで医学博士の森田豊氏は「ステロイドでダメなら血球成分吸着除去療法(GCAP)を行う。それでもダメなら大腸切除という手術になる」と説明。GCAPは、血液をいったん体外に取り出して特殊な機械を通過させて炎症に関与している血液成分を除去し、再び体内に戻す治療法。自民党関係者によると、首相はこの治療で劇的に症状が良化し、続投を決めたとみられる。

 もちろん、森田氏が「首相のような重責を背負った立場だと、相当なストレスがかかる。この病気はストレスが一番悪いとされており、悪化するのは当たり前」と指摘する通り、予断を許さない状況だ。だが、首相にとっては前回の電撃辞任は最大の屈辱で同じ轍(てつ)は踏みたくないとの思いが強い。27日で連続在職日数が2802日と歴代最長を日々更新中。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界情勢が混沌(こんとん)とする中、支持率も危険水域での闘病とあって、政権運営も綱渡りが続く。

 《通常通り公務》安倍首相はこの日、2日連続で午前中に官邸へ出向いた。閣僚らの訪問や新型コロナウイルスの最新状況について報告を受けるなど通常通りの公務を行った。「分刻みの日程」(官邸筋)をこなしたが、菅義偉官房長官は会見で「毎日お目にかかって見ていても、お変わりはない」と述べた。西村康稔経済再生担当相は同日の衆院内閣委員会で「25日は非常に元気で、普段と変わりない様子でさまざまな指示を頂いた」と説明した。

 ▽潰瘍性大腸炎 何らかの原因により持続する炎症が大腸に生じる病気で、腹痛や下痢、血便、体重減少などの症状が現れる。治療が不十分で病気が進行すると、大量に出血したり、腸管が破れるなど、重篤な状態になることもある。患者数は年々増加傾向にあり、15歳から35歳ごろに診断されることが多い。乳幼児期を含む小児期に発症することもある。免疫を抑制することなく腸の炎症を鎮める基本薬として「アサコール」などが使用される。

スポニチアネックス
2020年8月27日 05:30
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