健康不安説が持ち上がっている安倍晋三首相が8月17日、東京・信濃町の慶応大学病院で「日帰り検診」を受けた。「休みの一環で、前から決めていた」(菅義偉官房長官)というが、新型コロナウイルス対応への厳しい批判でストレスと疲労が蓄積。持病の潰瘍性大腸炎を悪化させたと見る向きは多い。

 1週間後の24日も同病院を訪れたことで、近く辞任するのではないかとの観測も流れる。首相はコロナ対策を説明するため今月中にも記者会見を開く方向で調整中だというが、第1次政権では13年前の9月に持病の悪化を理由に突然辞任した。はたして「コロナ政変」はあるのだろうか。(共同通信=内田恭司)

 ▽駆け巡った入院情報

 「安倍首相が体調悪化で入院するらしい」。情報が永田町を駆け巡ったのは16日だった。裏付けるように、首相は翌17日午前、車で慶応病院に向かった。入院はしなかったが、7時間半にわたり検査などの医療行為を受けた。24日も4時間滞在し、「前週の検査結果を聞き、追加的な検査を行った」(首相)という。

 首相の健康不安が盛んに言われるようになったのは7月に入ってからだ。真偽は定かでないが、写真週刊誌「フラッシュ」が「執務室で吐血した」と報道。さまざまなメディアが「体がふらついていた」「歩く速度が遅くなった」などと報じ、首相の健康問題が一気に注目を集めるようになった。

 今回の連続受診は「ふに落ちない」(野党幹部)部分が多い。首相はおおよそ半年ごとに人間ドックを受けているが、前回は6月13日で2カ月しかたっていない。17日は、日帰りの検診にしては滞在時間が長かった。潰瘍性大腸炎の治療のために急きょ病院に入ったとの見方が拭えない理由だ。

 ▽慶応病院に首相の医療チーム

 そもそも潰瘍性大腸炎はどのような病気なのか。潰瘍性大腸炎は、大腸内側の粘膜部分に炎症が生じ、ただれや腫瘍ができることで、腹痛や下痢、時には血便にも苦しめられる病気で、厚生労働省が難病に指定している。安倍首相は中学生の頃からこの症状に悩まされ、第1次安倍政権での辞任の理由となった。

 その後、抗炎症の有効成分を大腸全域に行き渡らせられる画期的な新薬「アサコール」が2009年に発売され、首相はこの薬を服用することで症状が大きく改善。12年12月の第2次政権発足以降は「アサコールを中心に、時には炎症の抑制効果が強いステロイド製剤も使い、病状をコントロールしてきた」(政府関係者)という。

 首相の健康管理に当たってきたのは「慶応病院の主治医が率いる医療チーム」(同)だ。同病院関係者によると、首相の激務が続いたり、疲労が重なったりした時は、東京・富ケ谷の自宅や、休日などに通う六本木のスポーツジムで対応することもあったらしい。

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47NEWS
2020/8/26 09:00 (JST)
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