2020年4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値が戦後最悪の下落となり、経済失速が鮮明になった。政権の看板政策「アベノミクス」を背景にした「経済の安倍」というイメージを帳消しにしかねない結果に、政府・与党内には重苦しい空気が漂う。

 「落ち込みは世界的な流れだ。日本だけの原因ではない」。自民党幹部はこう語り、新型コロナウイルスの感染拡大で避けられない結果だったとの認識を示した。

 12年の政権復帰後、首相は大胆な金融緩和などからなるアベノミクスを掲げ、リーマン・ショックで落ち込んだ経済再生に注力。1月の施政方針演説では「日本経済はこの7年間で13%成長し、来年度予算の税収は過去最高となった」と実績をアピールしていた。

 ところがこの後、コロナ禍が社会経済を直撃。12年12月に始まった景気の拡大局面は18年10月をピークに終了し、後退に転じていたところに新型コロナ感染の悪影響が重なった形だ。政府高官は「英国や米国の数字に比べ、緊急事態宣言を出した中でよく踏ん張った」と強調するが、厳しい状況に変わりはない。

 政権はコロナ禍の収束が見えない中、感染拡大抑止と経済再生の両立を模索する。ただ、なかなか軌道に乗らず、弱体化する政権に反転への妙手は見当たらないのが実情だ。

 ロシアとの北方領土交渉や北朝鮮の拉致問題解決で進展の糸口はつかめていない。アベノミクスによる実績も「新型コロナで吹っ飛んだ」(自民党関係者)。首相は24日に連続在職日数が歴代単独1位となるが、レガシー(政治的遺産)づくりは一層困難になりつつある。

時事通信
2020年08月18日07時04分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081700778&;g=eco