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保守派(右派)の学者としてはほかに、有馬学・九州大学名誉教授が
『「国際化」の中の帝国日本』(中央公論新社)の中で、
防衛大学学長を務めた猪木正道・京大名誉教授が『軍国日本の興亡』(中公新書)の中で、
鳥海靖・東大名誉教授が『もう一度読む山川日本史』(山川出版社)の中で、
それぞれ朝鮮人虐殺に言及しています。リベラル派・左派の学者については言うまでもないでしょう。
要するに歴史学の世界では、「関東大震災時に多くの朝鮮人がデマによって殺された」こと自体は、
右翼とか左翼といった政治的立場を超えて、誰も疑うことのできない「常識」なのです。
(殺された人の数や行政の関与の度合いについての認識は幅があるでしょうが)。

◉社会学の世界でも流言研究の常識
歴史学の世界だけではありません。朝鮮人虐殺を引き起こした当時の流言は、社会学者にとっても古典的な事例として常に意識されてきました。
そのため、流言を扱った研究ではしばしば朝鮮人虐殺の史実が言及されます。つまり、社会学の世界でも「常識」なのです。
とくに歴史学者は、史料批判の訓練をしっかりと受けています。そして、どのような学説的主張を行うにしても、
徹底した相互批判にさらされます。そうした世界の代表的なプロフェッショナルたちが、政治的立場を超えて「これは事実」と揃って認めているということは、
相当な事実と研究の蓄積の成果に裏打ちされていることを意味しています。



ネット上で、あるいは書籍で「朝鮮人暴動はデマではなかった」
「自警団の行動は虐殺ではなく正当防衛」と主張する人々は、
こうした研究の蓄積を覆せるような論証を行なってはいません。