大阪府などは4日、新型コロナウイルスの軽症患者に、消毒剤の一種、ポビドンヨードを含んだうがい薬でうがいを続けてもらったところ、唾液を使ったPCR検査で陽性になる割合が、うがいをしなかった患者に比べて低かったとする「研究結果」を発表した。吉村洋文知事がうがい薬の使用を呼びかけ、各地の店頭からうがい薬が消えたが、専門家からは「使い方を間違えると害になりかねない。知事の勇み足だ」と懸念する声も上がっている。

 「研究」は、府立病院機構運営の大阪はびきの医療センター(羽曳野市)が唾液中のウイルスが減れば重症化を抑制できると想定して実施。6〜7月に府内のホテルで宿泊療養している患者約40人を対象に1日4回うがいするグループと、しないグループに分け4日間調査。うがいをしないグループの唾液の陽性割合は56・3%だったが、したグループは21・0%だった。

 吉村知事や松井一郎・大阪市長と共に記者会見した松山晃文・同センター次世代創薬創生センター長は「うがいが唾液中のウイルスを減らす可能性がある」と述べたが、他人への感染抑制の実証については「これから」とした。体内にあるウイルスとの関係も不明だといい、検証が必要との考えを示した。

 会見場には市販のうがい薬が並べられ、吉村知事は「うそみたいな本当の話」と切り出し、「コロナに効くのではないかという研究結果が出た」と紹介。@発熱など風邪のような症状のある人やその家族A接待を伴う飲食店の従業員B医療従事者や介護従事者――を対象にうがいでの使用を呼びかけた。

 この呼びかけに対し、高鳥毛敏雄・関西大教授(公衆衛生学)は、「せきなど風邪症状がある人には有効かもしれない」とする一方で、「予防できると過信させるのは害になりかねない」と健康な人も含めて広く使用されることに警鐘を鳴らした。妊婦や甲状腺疾患がある人の使用にも注意が必要とされ、さらに「口の中や胃腸には(通常は問題のない)常在菌があり、そういったバランスを乱してしまう恐れもある」と述べた。「使い方を間違えると毒にもなる。アレルギーを持っている人も少なくない。対象をしっかり示して推奨する必要がある。呼びかけは知事の勇み足だと思う」と懸念を示した。【田畠広景、松本光樹】

毎日新聞
2020年8月4日 21時15分
https://mainichi.jp/articles/20200804/k00/00m/040/278000c