東京都千代田区の石川雅己区長は28日、マンションの地権者らに優先提供される「事業協力者住戸」を購入していた問題にからみ自身が刑事告発されるのは「不信任に当たる」として、区議会に解散通知を提出した。小林孝也議長は受け取りを拒み、各会派から反対の声が噴出。議会事務局は「地方自治法に照らして議会は解散されていない」との見解を示したが、当面は混乱が続きそうだ。【井川諒太郎、川村咲平】

 区長は6月、地方自治法100条に基づく調査権限を持つ区議会企画総務委員会(百条委)の証人尋問に出席。この際にウソをついたなどとして、百条委は区長の刑事告発を求める議案を出し、前日の27日に可決された。

 区長は28日午後、予算特別委員会の休会中に議長室を来訪。持参した解散通知をその場で受け取るよう求めた。だが、議長は拒否して受け取らなかった。区長が立ち去ると「通知に法的効力はない。新型コロナウイルス感染の中での暴挙は許せない」と話した。

 地方自治法は議会で首長が不信任された場合に議会を解散できると規定している。区長は独自の解釈で、刑事告発の議案が可決されたことで「不信任を受けた」と主張した。

 議会事務局は、総務省への問い合わせも踏まえ、不信任決議がないうえ、不信任を議長から区長に通知していないとして「解散の効力は発生していない」との立場だ。

 区長は記者会見で、「議会との議論が建設的ではない。私と議会の関係をあるべき姿にするため、有権者に判断していただく」と主張。新型コロナ対策で区民に一括12万円の給付をする予算案については「私の判断で執行できる」と述べ、議会の議決を経ない専決処分で対応できるとの考えを示した。

 突然の事態に、区議の一人は「百条委を潰すための疑惑隠し」と述べ、ある区職員は「前代未聞の暴挙」と憤った。区議会は区長不在のまま、29日にも予算特別委員会と百条委員会を開く方向だ。

毎日新聞2020年7月29日 08時48分(最終更新 7月29日 09時42分)
https://mainichi.jp/articles/20200729/k00/00m/010/011000c