国のHPに民間広告とは、異例の試みだ。気象庁が、HPに民間広告を掲載する準備を進めている。

 採用される広告は、特定の企業や商品ではなく、近頃よく見かける、検索履歴などから一人一人に合った広告がページに表示される「運用型広告」となる。

 気象庁は、このシステムを運用する企業を27日まで募集している。すでに複数社から応募があり、価格や内容などを加味して企画競争にかける。8月上旬に1社を選び、9月中旬から掲載を始める予定だ。

 なぜ、気象庁は民間広告を掲載するのか。

 理由は、気象庁の逼迫した予算だ。気象衛星などITシステムが、日々の業務を支えている。しかし、2015年以降、システム整備や維持にかけられる予算は年々減少している。本当は、気象衛星や新たなシステムづくりを進めたいが、気象庁の年間予算590億円のうち、2億円ほどしか予算を割けない状態となっている。予算が足りないため、少しでも補填するために、庁として広告掲載に踏み切った。

気象庁予算部の担当者は、「予算配分を決めるのは国なので、気象庁は与えられた分で何とかしなきゃいけない。広告掲載は苦肉の策です」と語った。

 高千穂大教授で国際政治に詳しい五野井郁夫氏はこう指摘する。

「古代中国では、気象と政治は切っても切り離せない関係でした。気象を軽視した為政者は、国益や国民を守ることができず職務を追われました。でも現代の日本で言うと、気象庁は最も利権が絡みにくい省庁で、政治家から見放されています。災害が起きても、特定の土建業者や広告代理店を優遇するのは別の省庁で、気象庁は蚊帳の外です。しかし、これだけ異常気象や災害が起きているにもかかわらず、しっかり災害予測するために予算を割かないのは、まさに気象を軽視する『失敗する政治』です」

「Go To」予算から気象庁に回すべきだ。

日刊ゲンダイ
2020/07/27 14:50 
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