安倍晋三首相の記者会見が、6月18日を最後に1カ月以上も途絶えている。首都圏を中心に新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、政府の「Go To トラベル」キャンペーン迷走で日本中を混乱させているにもかかわらず、対応は担当閣僚らに任せきり。首相自身が説明を尽くすよう求める声にも、沈黙を続けている。

 「検査能力にはまだ余裕がある。専門家も言っているように、(緊急事態宣言を発令した)あの時とはまだ状況が異なる」。首相は24日、首相官邸を出る際、記者団の質問に答え、再発令を否定した。やりとりは約1分。首相はその足で東京都内の私邸に帰った。
 首相は2月29日に、新型コロナへの政府対応を説明するため会見。これ以降、緊急事態宣言の発令や解除など節目ごとに会見に臨み、説明不足を批判されれば1時間を超えて質問に答える場面も珍しくなくなった。
 だが、通常国会閉幕を受けた6月18日の会見以降は一度も応じていない。国会答弁も同15日の参院決算委員会が最後で、野党が繰り返し要求する閉会中審査への出席も実現しないままだ。
 「アベノマスク」とやゆされた全世帯への布マスク配布に象徴される新型コロナへの政府対応は、メディアやインターネットで酷評された。首相周辺はこうした批判を念頭に「会見して良いことは何もない」と逃げ腰だ。政権内からは、秋の臨時国会召集にも消極的な声が漏れるほどだ。
 官邸のこうした姿勢を見かねた公明党の山口那津男代表は22日、日本記者クラブでの会見で「首相が先頭に立って国民に分かりやすく説明するのは大事だ」と苦言を呈した。
 野党は「都合が悪いと巣ごもりする」(立憲民主党幹部)と反発を強めている。立憲の枝野幸男代表は24日、福岡県久留米市で記者団に「これだけの感染者数でも大丈夫だと言うならもっと説得力ある説明をしなければいけない。その責任から完全に逃げている」と首相の対応を批判。「まず首相が会見し、現状がどういう状況なのか説明することが必要だ」と主張した。

時事通信
2020年07月25日07時33分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020072400410&;g=pol