コロナ禍で落ち込んだ消費の喚起を狙った「Go To トラベル」が大混乱だ。都内での感染拡大を受け、安倍政権が旅行代金割引の対象から「東京発着」を除外すると、予約のキャンセルが殺到。「キャンセル料を補償しない」との政府方針が批判されると、一転「補償する」と修正した。ところが、今度は「キャンセル料補償はおかしい」とSNSで大炎上。政府の失態に税金投入は納得がいかないということだ。安倍政権は一体、どう落とし前をつけるのか。

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 菅官房長官は20日、会見で「業者への働きかけや利用者への対応など必要な対応を早急に行っていきたい」と話し、キャンセル料の補償を検討すると表明。これにSNSは〈他人の旅行のキャンセル料を負担させられるとは思いませんでした〉〈国がキャンセル料を補償するのは明らかにおかしい〉などと大荒れだ。

 中には、〈国会議員の給料からキャンセル料お願いします〉といった厳しい意見も上がる。もともと、都内の感染拡大を受け、「やめるべき」「延期すべき」の声が広がっていたのに、22日にキャンペーンを強行しようとしているのは安倍政権だ。混乱を招いた張本人たちに「補償費用を出せ」と求めるのは自然な流れだろう。

首相と政務三役で計30億円

 何しろ、安倍首相をはじめ政務三役は“高給取り”がズラリ。国務大臣19人に副大臣25人、政務官は27人だ。国会議員は歳費の他、期末手当(年2回、今年6月支給分は約320万円)、月100万円の文書交通滞在費などをひっくるめた「年収」は約4000万円とみられている。

 さらに、総理大臣の6月の期末手当は577万円、国務大臣は421万円で副大臣404万円、政務官は344万円と“ヒラ”の国会議員より好待遇。12月支給分も6月分と同等と仮定して計算すると、首相以下72人の合計額は実に29億7848万円にも上る。その他、自民党議員が代表を務める政党支部には、党本部から年間計1200万円程度(2018年分)の政党交付金が支給されている。全て原資は国民の税金だ。

 そもそも、「Go To」のキャンセル料の扱いは二転三転だった。政府が「東京発着」除外を決定後の17日、赤羽国交相はキャンセル料を「補償しない」と明言。ところが、同日に公明党の石田政調会長が「補償について考えていかねば」と発言し、19日に自民党・岸田政調会長が同調したことで「補償」の方針が決定した。方針ブレブレな上、高齢者や若者の団体旅行を割引の対象から外すとした一方で、修学旅行は対象に含むというからワケが分からない。旅行業界関係者からは「どう線引きすればいいのか」「客に説明できない」といった悲鳴が上がるほどだ。

「政府が方針を変えるごとに問題が起きていますから、代金割引を利用できると思った利用者や旅行会社に、キャンセル料を補償するのは当然です。しかし、政府が起こした問題が原因ですから、利用しなかった国民から『なぜ税金で賄わなければいけないのか』と異論が出るのも当たり前。『身銭を切れ』という意見は理解できます。本来はトップが辞任してしかるべきでしょう」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)

「責任はある」と言いながら一度も責任を取ったことがない安倍首相がトップの政権だ。今回の一件で「身銭を切る」なんて良心どころか、責任すら感じていないのだろう。 

日刊ゲンダイ
2020/07/21 15:00
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