22日から始まる政府の観光支援事業「Go To トラベル」について観光庁は17日、新型コロナウイルスで重症化しやすい高齢者や感染者が多い若者の団体旅行、宴席を伴うツアーを補助の対象とするかは、旅行業者に委ねる方針を示した。赤羽一嘉国土交通相は、こうした旅行は支援の対象外にすると発言したが、人数や年齢の線引きは困難と判断した。基準が不明確なため、業者や利用者の混乱は必至だ。(原田遼、井上靖史、中沢誠)

◆東京だけ除外

 赤羽国交相は17日の会見で「安全で安心な旅のスタイルを定着させたい」と話した。その旅のスタートに東京は含まれない。

 東京都発着の旅行や都民の旅行は除外され、既に予約をキャンセルする動きが出ているが、赤羽氏はキャンセル代を補償しない考えを示した。

 なぜ東京だけが除外か。いま事業を始めて感染は拡大しないのか。政府の説明は根拠がはっきりせず、見切り発車の感は否めない。

 西村康稔経済再生担当相は5月に緊急事態宣言が解除された時、「経済生活圏を考えれば首都圏で一体的に判断するのが適切だ」と発言。夜の繁華街対策でも今月16日の国会で、指針を守らぬ事業者への休業要請は1都3県を一体的に検討する方針を示した。

 16日、政府の対策分科会後の会見で、尾身茂会長は「今回は東京が感染源となり、周辺に広がっている」として、東京の除外は「合理的な判断」と結論付けた。だが、分科会のあるメンバーは「一部の出席者から『東京と隣県が違うという根拠は何か』との質問が出たものの、政府から何の回答もなかった。スルーされた」と証言する。

◆実施ありき

 観光支援事業は8月から実施予定だったが、前倒しになった。国交省によると、観光業界から「かき入れ時の夏休みも対象にしてほしい」と要望があったからだ。

 16日の分科会では、専門家から「(事業実施が)早すぎる」と異論が出た。政府側からは「経済の活性化と感染対策、どっちもバランスを取らないといけない」という実施ありきの回答があったという。

◆万全でない

 国民の心配はキャンペーンによって感染が広がらないかだ。赤羽国交相は「東京を対象外とすれば感染防止策は万全、という認識ではない」と語っており、不安を抱えながらの出発となる。

 国交省は旅行業者や旅行者に求める条件を公表した。「旅行者全員に検温と本人確認を実施」などだが、こうした対策を本当に講じているかのチェック態勢は「今後詳細を詰める」と述べるにとどまる。

 感染症などの危機管理に詳しい日本大危機管理学部の福田充教授は「都外から都内に通勤している人は多く、首都圏はつながっている。なぜ周辺は大丈夫なのか説明は尽くされていない」と指摘する。

東京新聞
2020年7月18日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/43282