百田さんには多くの批判もある一方で、著書は累計2000万部に到達している。これは一体なぜなのか。
例えば、関連書を含めると100万部のベストセラーとなった『日本国紀』には、

内容が間違っているという数多くの指摘があった。間違っていることは事実である。でも、爆発的に売れた。
また、デマが売れるというなら、他の本が売れていてもいいはず。それなのに、なぜ百田さんなのか。2010年代を象徴する人物を現象として書きました。

平成期でもっとも売れた作家の一人で名実ともにエンタメ作家の頂点を極めた人物が、右派的なイデオロギーを有していること。
それを包み隠さずに出していて、安倍晋三首相に最も近い作家とされていること。

その現実を直視せずには問題が見えてこないと思います。ただ間違っていると言うだけなら、それだけで正しいポジションを取れるし、
勝った気にもなれます。でも、何が起きているのか、その現象を捉えることはできません。

見えないものに蓋をするのではなく、見えないものを見えるようにするのが僕の仕事です。僕自身はリベラル的価値観を有していると強く思います。
そのスタンスから右派に接近することで、見えてくるものもあると思いました。

――それはなんでしょうか。
右派の方が読者やマーケットを大事にしてきたことです。リベラル派がメディアを牛耳っているなら、
俺たちはマーケットを作ればいいと、数十年かけて開拓してきた。
藤岡さんの『教科書が教えない歴史』は120万部、小林よしのりさん『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新戦争論』は70万部。
とにかく書店で本を買ってもらうことが最大のインパクトだと平成の右派は考えてきた。百田さんもそこはすごく大切にしています。
逆にリベラルはマーケットを全然意識してこなかったと言えるでしょう。

――マーケットから目を背けてきたと。
それは嫌儲の現れでもあるし、いいものさえ作ればあとは勝手に広がるし、買ってくれるといった具合にマーケットや読者を意識して
こなかった。もっと言えば、おろそかにしすぎてきたと言えます。その間に右派は読者第一主義、マーケットファーストで市場の獲得に成功した。
それがいまになって大きな差となって現れてしまっている。

――リベラル派はそれらの動機すらも理解してこなかった。
そうです。動機を理解していれば、リベラル派はここまで深刻な事態にはならなかったはずです。
厳しいことを言えば、今の右派と左派は似ている部分もあると思っています。

――その心は?
右派における南京大虐殺や慰安婦問題が、左派にとっての「反安倍」です。
最新型はハッシュタグでムーブメントを起こそうという動きです、インターネットを活用し、とにかく動員するときに便利なのは、
それさえ言っていればいいというスローガンのような言葉です。それがどちらにもある。
細かく問うていけば、一致点がない言葉です。空っぽなスローガンだけがあって、なんとなくムードを作って動かそうとする。
でも、それで現実は見えません。今回右派のキーパーソンたちに取材して、人間が見えてきました。
人間を批評する上で、大事なのは、全部がダメ、全部が良いではなく、ここは良くてここは悪いとフェアな視点から描きだすことです。

リベラル派から見た安倍政権について、多くのファクトチェックがなされている。
でも、なぜあの政権が長続きしているのか、誰が支持しているのか、そのほうがずっと大事な話だと僕は考えています。
空虚な政権だとしても支持されてきた現実をどう考えるか、なぜ、どうしてという問いを立てないと見えてこないものがある

https://image.chess443.net/S2010/upload/2018020700002_10.jpg
一部引用
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74055?page=2
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74055?page=3
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74055?page=5