「観光事業者と旅行者の感染防止策の徹底を基本として開始する予定だ」

 政府が22日から始める観光支援事業「Go To トラベル」について、15日の衆院予算委で、実施の再考を求めた野党議員に対してこう答弁した西村経済再生担当相。

 新型コロナウイルスの新規感染者が急増している東京都が、警戒レベルを4段階のうち最も深刻な「感染が拡大していると思われる」に引き上げる方針――と報じられる中、新たな感染者を増やす恐れがある愚策を「今更やめられない」(政府関係者)という理由で突き進む姿勢は、かつての戦時下の日本軍を連想させる。

<こんな時に旅行に行っても、冷たい目で見られて楽しめるわけがない><観光地も大迷惑><Go To トラブル>など、ネット上には反対の書き込みが溢れており、米国やドイツなど海外などでも日本政府の方針に疑問を抱く報道が見受けられるという。

政府がなぜ、世論の反対を押し切って強行するのか分からないが、そもそも、今の状況で<Go To キャンペーン事業>を行うのは閣議決定に反しているだろう。4月7日付で閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」にはこう書いてあるのだ。

<新型コロナウイルス感染症の拡大が収束した後の一定期間に限定して、官民一体型の消費喚起キャンペーンを実施する>

 つまり、ここにはハッキリと<収束した後>とある。東京や大阪など全国で新規感染者が増えている状況は、どう考えても<収束した後>じゃない。4月28日の衆院予算委では、「Go To キャンペーン事業」予算根拠をめぐって、赤羽国交相が「積算根拠というと、ちょっと細かい話でございますので、(略)単純に言いますと、1泊2万円でございますので、単純ですと6500万人分、泊の計算になっております」と答弁していたが、莫大な税金を投じて数百万〜数千万人が感染する可能性のある事業を政府が主導してどうするのか。

元東京都衛生局職員で、医事ジャーナリストの志村岳氏がこう言う。

「今、真っ先にやるべきことは新規感染者が増えている東京・新宿や池袋などのロックダウンです。感染拡大している地域をそのままにして、『旅行してください』は論外でしょう。政府は感染防止を徹底して実行すると説明しているが、そもそも、旅行者が自分の感染の有無さえ分からず、受け入れ先のホテルや旅館の感染防止策も決まっていない。要するに何もかもが分からないままで見切り発車するわけで、徹底も何もない。このままだと取り返しのつかない事態になりかねない。政府は新型コロナの恐ろしさを理解しているのでしょうか」

「Go To」で感染拡大へまっしぐらだ。

日刊ゲンダイ
2020/07/16 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/276062