財務省は14日、太田充主計局長(60)が20日付で事務方トップの次官に昇格する人事を発表した。森友学園への国有地売却を巡る決裁文書改ざんを主導した佐川宣寿元理財局長の後任として、国会での説明を担当。文書改ざん後に自殺した近畿財務局職員の妻は佐川氏らを提訴し、発覚から3年以上が経過した森友問題は依然尾を引いている。

 自殺した赤木俊夫さん=当時(54)=は残した手記で、本省からの指示で改ざんが進む様子を「これが財務官僚機構の実態」と批判した。太田氏の国会での説明内容には「詭弁を通り越した虚偽答弁」と指摘した。

 財務省は調査報告書で「なぜ改ざんしたか」という問題の核心をあいまいにしたまま、処分された当時の職員の多くを昇進、異動させた。退任する岡本薫明次官と同じく、太田氏も改ざんの結果責任で「文書厳重注意」を受けながら、予算編成を担当する主計局長を経てトップに昇格することになる。

 森友問題の影響について、麻生太郎財務相が14日の記者会見で「信用が失墜した」と認めたように、「最強官庁」と呼ばれる財務省の威信は低下している。消費税増税や新型コロナの対策予算で、明らかな無駄が紛れ込んでも、「官邸の方針なら仕方ない」(財務省幹部)と黙認する場面が多くなったという。太田氏は主計局長として、これらの予算編成を主導した。(渥美龍太)

東京新聞
2020年07月15日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/42547