新型コロナウイルスの感染が再び拡大する中、政府の対応策の発信を巡り、安倍晋三首相の消極的な姿勢が続いている。短時間のぶら下がり取材には応じるものの、首相記者会見は国会閉幕を受けて実施した6月18日以来、1カ月近く途絶えている。

 首相は14日、官邸で大阪府の吉村洋文知事と会談した際、新型コロナについて「都市部を中心に感染が広がっており、高い緊張感を持って注視しながら対応している」と説明。大阪府が自粛要請の独自基準を定めていることに触れ「検査を徹底的に行う重要性の認識は同じだ。自治体と協力し感染拡大を抑え込んでいきたい」と述べた。

 首相は新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言が解除された5月25日の記者会見で「流行をほぼ収束することができた」と強調。6月18日には新規感染者の減少を理由に社会経済活動を再開させる方針を示し、徐々に自粛要請を緩和している。

 だが、新規感染者は再び増加に転じ、東京都では7月2日に2カ月ぶりに100人を超え、9日からは4日連続で200人超となった。世論調査では、第2波への不安を感じている人が9割以上を占め、都市部からの感染拡大に国民の懸念が高まっている。

 それでも、首相は会見を開かず、現状を積極的に説明しようとする姿勢はみられない。緊急事態宣言を再発令しない理由も自身では語っていない。

 14日夜に官邸を出る際は、記者団から22日に開始する観光支援事業「GoToキャンペーン」の実施予定に変更がないか問われ「感染状況を高い緊張感を持って注視している」と回答。記者団は追加質問で、感染防止対策が十分か尋ねたが、答えずに立ち去った。(上野実輝彦)

東京新聞
2020年07月15日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/42581