昨年7月の参院選をめぐり、前法相で衆院議員の河井克行容疑者(57)=同=と妻で参院議員の河井案里容疑者(46)=自民党を離党=が公職選挙法違反(買収など)の罪で起訴された事件で、検察は現金を受け取ったとされる広島県の地元議員ら100人については全員刑事処分の対象としなかった。起訴や不起訴の判断すらしていないため、検察の不起訴を市民の判断で覆せる検察審査会の審査の対象にもならない。

 100人の処分について、東京地検特捜部の市川宏副部長は「買収事件に関して、起訴すべきものは起訴した」と繰り返す一方、理由は「捜査の内容なので差し控える」と説明。広島地検の横井朗(あきら)次席検事も判断理由を明かさなかった。

 公選法では、投票や票の取りまとめを依頼する趣旨を認識して金品をもらった側も処罰の対象となる。返金しても罪は成立するとされる。買収事件では、汚職事件と同じように、現金を渡す側、受け取る側という2人以上の行為が罪の成立に必要で、受け取った側も立件するのが一般的だ。

 あるベテラン検察官は「現金買収事件では、受け取った側は5万円までが罰金、それ以上は公判請求するのが相場観だ」と明かす。別の検察官も「これまで警察が事件化し、検察が処分してきた事件と整合性がとれない」と指摘。「地元議員も政治家。夫妻を立件するために受け取った側と取引したのではないか、という見方をされてしまう」と処分判断に疑問を呈す。

朝日新聞
2020年7月8日22時41分
https://www.asahi.com/articles/ASN7877HCN78UTIL00N.html