いま総選挙をすれば66議席減――。安倍首相が解散・総選挙に打って出るとの観測が広がる中、政府高官の発言とされるメモが出回り、自民党内に衝撃が走っている。

 メモはこんな内容だ。

「6月下旬に自民党が極秘裏に行った次期衆院選の情勢調査で、現時点で総選挙を行った場合、同党は66議席失うとの結果が出た。この結果を下村選対委員長が報告すると、安倍首相も青ざめた」

 自民党が現有284議席から66議席減らせば218議席となり、単独過半数の233を大きく割り込む。連立を組む公明党の約30議席と合わせても過半数がやっとで、憲法改正の発議に必要な3分の2(310議席)には遠く及ばなくなる。

「出回っているメモは数パターンあり、自民党が65議席減というものや、結果を聞いた安倍総理が『じゃあ、解散風を吹かせるか』と言ったという内容のものもあった。ここまでの議席減が予想されると、解散なんて絶対にダメだという声が党内で大きくなるでしょう」(自民党中堅議員)

■解散なんて打てっこない

 いずれも出所不明の怪しいメモではあるが、いま選挙をやれば、自民党が議席を大きく減らすことは間違いない。

 政治評論家の野上忠興氏が言う。

「自民党が情勢調査をかけたことは事実のようです。野党が統一候補を立てれば、66議席減では済まない可能性もある。とても解散なんて打てる状況ではないということです。それなのに、秋に解散があるように見せているのは、党内を引き締め、政権の求心力を保つためでしょう。解散を打てないからこそ、解散風を吹かせているのです。ただ、風を吹かせ過ぎて、すでに走り出している若手議員もいるので、少しブレーキをかける意味もあって、あえて議席激減のメモを官邸筋がバラまいたのではないか。あるいは、情報戦で野党を撹乱させる目的かもしれません」

 2017年の前回選挙から、政権が窮地に陥るたびに解散風が吹いたものだが、結局は“やるやる詐欺”に終わっている。

 今回の解散風もカラ吹かしなのか。むしろ、風がやんだ時の方が危ないと警戒すべきかもしれない。

 来年秋までには確実に解散・総選挙が行われる。野党はいつでも受けて立てる態勢を早く整えることだ。

日刊ゲンダイ
2020/07/03 06:00
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