「週刊文春」5月28日発売号が報じた、持続化給付金事業を電通の“幽霊法人”である一般社団法人「サービスデザイン推進協議会(以下、サ協)」が受託していた問題。これまで、社団法人であるサ協は利益を出すための法人ではなく、代表理事も無給と説明してきたが、電通が設立時の代表理事に対し、「サ協案件」等の名目で約1000万円を支払っていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。

 この代表理事は、赤池学氏。サ協設立時から2年にわたり代表理事を務め、株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所(UDI)所長も務めている。

 電通関係者が証言する。

「赤池氏は一般社団法人『環境共創イニシアチブ』(SII)の代表理事も務めていますが、このSIIとサ協に関する報酬を電通が肩代わりする形で、赤池氏側に年間1千万円ほどの支払いをしていました。民間同士の契約にすることで、国の事業に義務付けられる審査の目から逃れられる。外部からのチェックが不可能な“裏金”といえます」

 赤池氏が所長を務めるUDIの代表取締役CEOの竹腰稔氏が、「週刊文春」の取材に応じ、実名で次のように証言する。

「弊社において、取材があっても『何も知らない』で押し通すという指示が通達されましたが、包み隠さず話すべきだと思ったのです。サ協代表理事が『無償だった』という説明は正しくありません。弊社から電通に提出された過去の精算見積書を見ると、実際に報酬が支払われていたことが分かります」

 竹腰氏が示した2枚の見積書の件名は〈国プロジェクト事業開発〉。2017年9月30日付と2018年3月7日付の半年分ずつで、どちらも金額は〈¥5,400,000〉、一枚目の項目欄には以下のように並んでいる。

〈サービスデザイン推進協議会案件(ビジネスクリエーションセンター:平川健司様)4/26, 4/27, 6/15〉

〈環境共創イニシアチブ案件〉

 支払い名目は〈国プロジェクト事業開発アドバイザリーフィー〉となっており、サ協が受注している国の事業に関して、代表理事の赤池氏に報酬が支払われていたことが読み取れる。

 2017年当時、サ協は経産省から「おもてなし規格認証事業」(4680万円)や「IT導入支援事業」(約100憶円)といった民間委託事業を請け負っていた。日付はミーティングが実施された日、ビジネスクリエーションセンターは、サ協業務執行理事である平川氏が当時所属していた電通の部署である。

 サ協とSIIは、共に国から巨額の事業を受注し、その多くが電通に再委託されたことで、「中抜き」や「丸投げ」との批判を浴びている。

 赤池氏を直撃すると、

「支払いは間違いなく貰っていますが、そこに協議会の費目が入っていたかどうか分からない。愛知万博とかでは、もっとすごい額を請求していますよ。電通が見積書の内容を決めていましたから、そちらを取材してください」と答えた。

電通に質問状を送ったが回答はなかった。

 これまで、電通や経産省は「サ協が受託することによる不当な利益は生じない」と繰り返し強調。サ協やUDIも、これまで「代表理事の対価は無報酬」とカネの流れを否定してきた。巨額の公費を受注した社団法人のトップに、再委託を受けた電通が約1000万円を支払った疑いが浮上したことで、国から受託した事業の収益が還流している疑惑が浮上した。また、持続化給付金事業でもこうした〈アドバイザリーフィー〉が発生していないのか、電通や経産省の説明が求められることになりそうだ。

 7月2日(木)発売の「週刊文春」では、サ協が開いた6月8日の会見における設立時の経産省の関与を否定するやり取りが“やらせ”だったことを示すメールや、「前田ハウス」の癒着疑惑が浮上した前田泰宏・中小企業庁長官を守ろうとする新たな内部資料などについても詳報する。

文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/38771