昨年7月の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、広島県内の地方議員や首長たち31人が、逮捕された前法相の河井克行容疑者(57)=衆院広島3区=と、妻の案里容疑者(46)=参院広島=から現金を渡されたと認めた。26日までの中国新聞の取材に答えた。31人のうち広島県議が11人、広島市議が8人を占める。1人当たりの金額は10万〜200万円と説明。総額は1310万円となる。案里容疑者の当選へ、両容疑者が金の力を借りて地元政治家を頼った疑いが浮かぶ。

 今月18日に検察当局に逮捕された両容疑者は、投票や票の取りまとめを依頼する趣旨で94人に計約2570万円を渡した疑いがある。関係者によると、このうち約40人が地元政治家という。取材で授受を認めた31人は検察当局の事情聴取で同様の内容を説明しているとみられ、この中に含まれている可能性が高い。

 31人のうち地方議員は28人で、実名で取材に答えたのは15人。内訳は、広島県議11人(実名は3人)▽広島市議8人(同3人)▽安芸高田市議3人(全員が実名)▽廿日市市議2人(同)▽呉市議、江田島市議、府中町議、北広島町議各1人(同)―となった。

 首長は3人。三原市の天満祥典市長、安芸高田市の児玉浩市長(参院選当時は県議)、安芸太田町の小坂真治前町長となる。小坂氏は受領を明かして4月に辞し、天満氏は今月25日に辞意を表明した。実名での証言は計18人となる。

 金額は自民党の奥原信也県議が200万円で突出する。「陣中見舞い」「政党支部への寄付」として両容疑者から3回受け取った。最少の10万円は5人おり、その1人の同党の渡辺典子県議は「後援会への寄付」と説明した。ほかの県議は30万円か50万円だった。広島市議は30万〜70万円、それ以外の市町議は10万〜30万円という。

 時期は昨年4月の統一地方選前後が中心だが、同7月4日公示の参院選の選挙期間中の議員もいた。両容疑者からの名目は、地方選での「当選祝い」「陣中見舞い」などが目立つ一方、選挙応援の趣旨や違法性を認識していた議員もいる。

 議員の中には「克行容疑者が封筒を置いて帰った」「押し問答した」などと、押し付けられたと主張する声がある。克行容疑者の事務所に持参するなどして返却したとする議員もいる。

 参院選広島選挙区は改選2議席を巡り、案里容疑者、自民党現職の溝手顕正氏、野党系無所属現職の森本真治氏が争う激戦だった。検察当局は、県内で地盤が弱い案里容疑者が2人の現職に割って入るため、両容疑者が幅広い買収工作を仕掛けたとみている。

中国新聞
2020/6/26
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