経産省の民間委託事業をめぐって、「週刊文春」6月18日発売号で報じた電通の「下請け圧力問題」。「週刊文春」は、持続化給付金事業の下請け企業が、電通の意向として、ライバル会社の博報堂に協力しないよう下請けを”恫喝”するメッセージ全文を入手した。

 メッセージは、株式会社テー・オー・ダブリュー(TOW)の担当者が、複数の下請け企業に対して送ったもの。イベント企画会社であるTOWは、電通を通して、今回の持続化給付金事業の一部を請け負っている。

メッセージは5月24日、持続化給付金事務局のSlack内でTOWの責任者から一斉送信された。その文面は〈*責任者の方以外社外秘でお願いします〉という注意書きの後、次のように言及する(以下原文ママ)。

〈今後電通がある理由で受託に乗り出さないコロナ対策支援策があります。具体的には家賃補助の給付事業です。この話は電通がやりたくない、かつ中企庁(編集部注・中小企業庁)もいろんなところに相談をして全て断られ、最終的に博報堂が受注の可能性があるものになりそうです〉

「家賃補助の給付事業」とは、売り上げが減った中小事業者へ家賃を給付する家賃支援給付金事業のこと。メッセージの送信日は同事業の公示日より前で、電通の競合他社への警戒ぶりが窺える。文面はこう続く。

〈そのため、電通傘下で本事業にかかわった会社が、この博報堂受託事業に協力をした場合、給付金、補助金のノウハウ流出ととらえ言葉を選らばないと出禁レベルの対応をするとなりました。

 対象はこのリストに載っている各社の皆様にご協力をお願いできればと思います。

 TOWとしても長年の関係と信頼があるうえで、今回の仕事をいただいているため、当然ですが弊社が協力をお願いした皆様にもすいませんが、強制的にお願いしたい次第です〉

 さらに、〈支部のプロダクションの皆様にはリーダーからご説明いただきたく、末端の人材派遣会社などは受けざるお願いこともあると思いますが、もしそんな声が聞こえてきたら報告をいただければと思います。よろしくお願いいたします〉と違反者の“密告”まで要求している。

イベント会社関係者が明かす。

「つまり、持続化給付金事業を電通から請け負っていた会社が博報堂に協力した場合は、今後一切仕事を回さないと脅迫している。このメッセージは電通の指令のもと送られ、それを受けた各エリアの担当者たちが各県のプロダクション等に伝達する流れです。結局、家賃支援給付金事業は942億円でリクルートが受託することになりましたが、電通によって公正な競争が阻害され続けてきた証拠に他なりません」

小誌は、本件について、事実確認の質問状を送ったが、電通から回答はなかった。しかし、「週刊文春」の発売日前日の6月17日夜、ホームページに「当社社員が受発注関係にある協力会社の従業員に対し、業務にまつわる不適切な発言を行ったことが判明いたしました」と発表。また個別の問い合わせには「回答は差し控えさせていただきたい」とし、説明を拒んでいる。TOWからの回答はなかった。

 関係者によれば、今回のメッセージは、電通社員の意向を受けて、下請けのTOWが発信したものと見られる。競争相手と取引しないよう圧力をかける行為は、独占禁止法に抵触する恐れもある。

 持続化給付金事業を巡っては、発注した中小企業庁のトップ・前田泰宏長官と電通が設立したサービスデザイン推進協議会との”癒着”が論議を呼んでいる。経産省が、こうした委託先への不適切行為に対し、どのように対処するのか、注目される。

 週刊文春6月25日(木)発売号でも、経産省と電通を巡る新たな”癒着”疑惑を報じる。

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