昨年7月の参院選をめぐり、票の取りまとめを依頼する趣旨で約2570万円の現金を地元議員ら延べ96人に渡したとして、東京地検特捜部は18日、前法相の衆院議員・河井克行容疑者(57)=広島3区=を公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕した。この参院選で初当選した妻の参院議員・案里容疑者(46)=広島選挙区=も、このうち5人への買収容疑で逮捕した。

 特捜部は認否を明らかにしていないが、夫妻は逮捕前の任意聴取に買収行為を否定していた。2人は17日に自民党を離党した。

 特捜部は18日、容疑を裏付けるため、都内にある2人の国会議員会館の事務所などを家宅捜索。資料を押収するなどし、前法相らによる多額の買収容疑の実態解明を進める。克行氏を法相に起用した安倍晋三首相へのダメージは必至だ。

 特捜部の調べによると、克行氏は昨年3月下旬〜8月上旬、案里氏を当選させるため、計約2400万円の現金を広島県議など地元議員や後援会・陣営関係者91人に提供。案里氏は同年3月下旬〜6月中旬、克行氏と共謀して計170万円の現金を5人に渡した疑いがある。現金を受け取った議員らの大半は、2人の目的を認識したうえで現金を渡されたことを任意の聴取で認めていた。

 昨年夏の参院選は保守分裂の激しい選挙戦となった。3月に案里氏が立候補を表明した後の4〜6月、案里氏側に自民党本部から計約1億5千万円の資金が提供されていた。逮捕容疑の時期と重なっており、特捜部は多額の買収資金との関わりについても調べるとみられる。

 2人の買収容疑は、案里氏陣営による車上運動員への違法報酬事件の捜査で浮上。広島・東京両地検が共同で捜査を進めてきた。2人が起訴されれば短期間での判決を目指す「百日裁判」となる可能性などを踏まえ、捜査・公判体勢が充実した東京地検が逮捕した。

 一方、朝日新聞の調査報道では、夫妻が昨年3〜7月、1人につき5万〜60万円、計31人に総額700万円超の現金を持参したことが判明。いずれのケースも領収書のやりとりはなかった。受け取った地元議員らは「参院選で案里氏を応援してほしいとの趣旨だと思った」と説明していた。

 克行氏は当選7回。昨年9月に法相に就任したが、案里氏陣営の違法報酬疑惑が明らかになった同10月に辞任した。案里氏は広島県議を4期務め、昨年7月の参院選で初当選した。

朝日新聞
2020年6月18日22時26分
https://www.asahi.com/articles/ASN6L32QZN6KUTIL062.html