新型コロナウイルス対策ではいいところがなかった安倍晋三首相。多くの国民が生活苦や精神的な不安定感に直面し、内閣支持率が軒並み下落。政権末期の様相すら帯び始めた。

 立憲民主党の安住淳国対委員長はこう斬る。

「安倍首相の言うことを素直に聞く自民党議員が少なくなっていますね。今まで、安倍首相に押さえつけられていた分の反動は大きいでしょう。支持率が劇的に下がったのは国民に見透かされているからですよ」

 政権発足から7年半。官邸主導で自民党内や霞が関を支配してきた安倍首相と菅義偉官房長官のコンビだが、ついに変化があったと、永田町に詳しいある人物は語る。

「菅官房長官が官邸から距離を置かれるようになり、代わって実権を握るようになったのは今井尚哉首相補佐官。これまでは、菅さんが霞が関の事務方の要である杉田和博副官房長官を使いながら官僚人事を差配してきたが、それができなくなってきた」

 脇に追いやられた形の菅氏は、自民党の二階俊博幹事長と急接近。麻生太郎財務相、岸田文雄政調会長のラインに対抗する方向で歩調を合わせているという。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。

「問題は今井さんと菅さんのそれぞれがコントロールできる部分は違うので、入れ替わったからと言って全部がうまくいくわけではない。官僚が安倍内閣の限界を感じ始めてもいる。このところ、閣議決定したことでも二階幹事長がひっくり返していますから。それには菅さんが二階さんと情報共有して動いているからだと言われています」

 収入減世帯への「条件付き30万円給付」は、二階氏が公明党の山口那津男代表を巻き込んで「国民一律10万円給付」に言及し、ひっくり返したとされる。黒川氏の定年延長含みの検察庁法改正案についても、二階幹事長が待ったをかけ、結果的には安倍首相に断念させるという形になった。

「だから、官僚たちにとっても官邸だけを見ていても、またひっくり返されるかもしれないという不安感がある。官僚たちが迅速に対応するには絶えず、プランB、プランCも作っておかないといけないという風潮が生まれている。安倍首相の天敵の石破茂氏のところへ、官僚たちがあいさつに訪れるようになったのも、官僚たちが保険をかけ始めた表れでしょう」(角谷氏)


 2020年度の総額32兆円にも上る第2次補正予算案は、12日の参院本会議で可決された。政府は10兆円もの巨額の予備費を計上。立憲民主党の衆議院災害対策特別委員会筆頭理事の岡島一正議員はこう憤る。

「予備費は次の国会が開くまでに何か緊急に必要なことがあったら使うお金。必要なお金ですが、10兆円もの過度のお金は必要ではありません」

 前出の安住国対委員長は自身の体験からこう指摘した。

「私の財務大臣当時のことを振り返ると、10兆円というのは異常な数字です。大体、8千億円からせいぜい1兆円くらいまでが常識なんですよ。桁違いです。防衛省の1年分の予算の2倍ですから」

 与野党の国対委員長が会合を持ち、政府は5兆円については大枠の使途を示すように改めたが、残りの5兆円は依然として使い道不明のまま。予備費は、もしも災害が起きた際、国会が開かれて補正予算ができるまでの当座をしのぐために準備しておくという性格の予算だ。

「具体的に何に使うかは政府に白紙委任で、政府の判断で決めることができるから、『桜を見る会』のような集まりに使おうと、飲み食いに使おうと議会はチェックできないのが実情なんです。政府に白紙委任される金なので、10兆円を自由に使わせてもよい、というくらい安倍内閣に信用があるのかという話です」(安住氏)

 今国会閉会後、次の秋の臨時国会をいつ開くかは安倍首相が決める。

 前出の岡島議員はこう続ける。

「5兆円にしても10兆円にしても、国民の税金なんです。もし、緊急事態が起きたら、まずは過去の予算で通常、用意してきた4千億円から8千億円くらいの予備費で対応する。そして事態に応じて委員会や国会を開いて本格的に対応すればいいわけです。最初から白紙委任の10兆円の予備費をぶち挙げたこと自体、自由に使える予算さえあれば国会は当分開きませんという宣言をしているようなものです」

 予備費が事実上、選挙アピールに使われてしまう恐れさえあるのだ。

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週刊朝日
6/17(水) 9:00配信
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