国の持続化給付金事業の委託先を決める競争入札で、経済産業省は応札した二者が事業内容を提示した翌日、一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ協)を落札者と決めた。審査対象の提案書はそれぞれ二百ページ近くあり、わずか一日で優劣を評価するのは困難だという指摘が専門家から出ている。経産省は入札が適正に行われたと説明するが公示前に複数回、サ協関係者と面会していたことも分かっており、公平性に関する疑念が一層深まっている。 (大島宏一郎、桐山純平)

 給付金事業の委託先を決める入札は価格だけでなく、事業の提案内容も審査される「総合評価方式」で行われた。サ協と、競争相手だったコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー(デロイト)はいずれも四月十三日に提案書を提出。ともに二百ページ近くあったが、経産省は双方へのヒアリングもせず、翌十四日にサ協の落札を決めた。

 この入札を巡っては、経産省が四月八日の公示に先立ち、給付金事業の制度設計の一環としてサ協、デロイトと個別に面会。サ協が三回で計三時間だったのに対し、デロイトは一回の一時間だったことが判明している。さらに、事業を所管する経産省中小企業庁の前田泰宏長官がサ協幹部の電通関係者と海外で会食していたことも明らかになり、野党は「入札は出来レースだったのではないか」と批判している。

 国の入札制度に詳しい上智大の楠(くすのき)茂樹教授は、総合評価方式について「さまざまな項目を点数化して評価するので、提案のあった翌日に落札者を決めるのは難しい」と指摘。公示前の両者とのやりとりが明らかになっていないことを理由に「具体的な内容を公表しない限り、事業者間の競争条件が等しかったとは言えない」と話す。

 立憲民主党の大串博志衆院議員は十二日の衆院経産委員会で「ヒアリングもせず翌日に落札者を決めることは可能か」と問いただした。梶山弘志経済産業相は「適正に行った入札の結果であったと聞いている」と答弁した。

東京新聞
2020年6月17日 07時12分
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