相変わらずの“太郎節”だった。れいわ新選組の山本太郎代表(45)が15日、東京都知事選(18日告示、7月5日投開票)への出馬を表明した。しかし、立憲民主、共産、社民の3野党が支援する元日弁連会長の宇都宮健児氏(73)と票を食い合う可能性が高く、さすがに“太郎ファン”からも非難ゴウゴウだ。

「1400万人いる東京都民の生活を底上げできる、餓死寸前の人に対してすぐ手だてが打てるんだったら、そりゃ目の前の東京都知事選に出るでしょ! って話なんです」

 午後2時から始まった出馬会見には、約60人の報道関係者が殺到。ひしめく記者を前に、山本氏は徐々にボルテージ全開に。都内でコロナ禍による困窮者を目の当たりにしてきたエピソードを語り、「東京の中でそんなこと起こっているのに、小池さん何したんだよ! ってことですよ」「国に、『もっと金引っ張ってこい』って言ったのかよって」――と気炎を上げた。

 ストレートな言葉で政策を訴える“太郎節”は健在だったが、出馬表明には、“太郎ファン”からも〈正直ガッカリ〉〈国政で頑張って欲しかった〉〈票が割れて小池知事に負けます〉などと、批判が止まらない。山本氏と宇都宮氏がリベラル票を奪い合う懸念があるからだ。

50万票しか取れなければ…

 そもそも、野党統一候補が実現しなかったのは、山本氏が「無所属」ではなく「れいわ」からの出馬にこだわったからだ。「れいわ公認」では、他の野党が乗れるはずがなかった。もし、山本氏が「れいわ」にこだわらなければ、野党統一候補になっていたはずである。

「山本代表の強行出馬の裏には、次期衆院選や都議選に向けて『れいわ』の知名度を上げたい思惑が透けます。昨年の参院選の時、結党から3カ月で4億円も集めた“れいわ旋風”は正直、今は昔ですからね。山本代表本人も影響力の低下をヒシヒシと感じているはずです。れいわ内部では、『宇都宮推し』と『山本代表出馬』とが対立したといいます。いずれにしても、野党候補が分裂し、小池知事はニンマリではないか」(野党関係者)

 山本氏は会見で、知事選の狙いとして「小池さんの票を削っていくこと」と自身の知名度には自信満々だったが、知事選出馬は山本氏にとって、大きな賭けになるのは間違いない。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。

「山本代表が50万票しか取れなければ、その存在感を示すどころか『大したことない』と思われかねません。一方、100万票以上でも取れば、次期衆院選などでの存在感も高まるでしょう。ただ、山本代表の出馬が野党結集に深いキズが付くとは思えません。国民民主党は自主投票ですし、立憲を支持する連合東京は小池知事を支援するので、そもそも、与野党対決の構図は崩れているからです。山本代表が『野党結集を邪魔した』との批判は最小限にとどまると考えられます」

 山本氏の“皮算用”は吉と出るか、凶と出るか。

日刊ゲンダイ
20/06/16 14:50
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