国の持続化給付金事業を巡り、委託先の一般社団法人サービスデザイン推進協議会が入札への参加を決めた四月の理事会に、当時の笠原英一代表理事(今月八日に退任)が欠席していたことが分かった。巨額な国の事業の応札をトップ抜きで決める法人のいびつな実態が浮かんだ形。経済産業省はこれまで「代表理事は出席していた」と明言しており、説明が虚偽だったことも判明した。 (大島宏一郎、桐山純平)

 給付金事業に関する競争入札は四月八日に公示され、法人は前日七日の理事会で応札することを決めている。法人の広報担当者は本紙の取材に「笠原氏は都合で欠席しており、事後に報告し、承認いただいている」と認めた。

 経産省の担当課長は九日、本紙が事実誤認を指摘したのに対し、笠原氏の欠席を認めた上で「間違った説明をして申し訳ない」と釈明した。ただ、「笠原氏が(理事会の決定を)知っているという事実は変わらない。細かい点なので訂正する必要はない」と話した。

 笠原氏はこれまでの本紙の取材に「(給付業務については)一切知らない」と答えている。六月二日の野党合同ヒアリングでは、国民民主党の渡辺周衆院議員が「本当に理事会は開かれたのか」とただしたのに対し、担当課長は「給付金事業の応募を理事会の席で決議した。(笠原氏は)その場にいるので、もちろん知っている」と答えていた。

 説明が一変したことについて、渡辺氏は「何とかごまかせると思ったのだろうが、国会をなめている」と批判した。このヒアリングは現在もインターネットで視聴できる。

 野党は、法人が広告大手の電通に給付金事業をほぼ丸ごと再委託するための「トンネル法人の疑いがある」と追及している。法人を巡っては、法律で義務づけられている決算開示を怠っていたことも明らかになっている。

◇持続化給付金事業の再委託

 経済産業省中小企業庁は持続化給付金の事業を、一般社団法人サービスデザイン推進協議会に769億円で委託。事業は、749億円で法人から再委託を受けた電通を経由して、電通子会社やパソナ、トランスコスモスなどにも外注されている。

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東京新聞
2020年06月10日 07時06分
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