[東京 8日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染対策として実施している持続化給付金事業の事務を受託した「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」の業務執行理事、平川健司氏が8日、記者会見し、2016年の協議会の設立に経済産業省が関わった事実はないと述べた。また、今回の給付金事業において、再委託を受けている電通 (4324.T)があげる利益について、電通副社長の榑谷典洋氏は「通常実施している業務に比べて低い営業利益になる」とし、不当な利益を上げているとの観測を否定した。

持続化給付金事業の事務委託においては、事業を受託した「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」の実態や、電通への再委託比率が大きい点などが問題視されていた。社団法人と電通が、この問題について初めて会見を行った。

同協議会が持続化給付金事業の事務に手を挙げた理由について、平川氏は、同協議会が「中小企業の支援を行うために大企業が連合した社団法人」だとし「この事業こそ、この社団を設立した趣旨に合う」と述べた。

同協議会は2016年に設立されてすぐに経産省の「おもてなし規格認証事業」を受託している。これについて、平川氏は、社団設立前の3年間、中小企業支援のプロジェクトをやってきた経緯があり、ノウハウも培ってきていたと説明した。

また、定款のプロパティの作成者名が経産省の「情報システム厚生課」となっている点については「指摘を受けて初めて気が付いた。いくつかの事例を参照し、ひな形にしながら書いた」とし、経産省が関与したとの疑念を否定した。^

今回の案件で電通が直接受託しなった点について、電通副社長の榑谷氏は、巨額の預かり金を1民間企業のバランスシートに計上することは「不可能ではないが、経理部門の判断として不適切と判断した」としたほか、給付金の入金の確認書を送付する場合、電通という記載になると、受け取った人の戸惑いを招くことになることなどを挙げた。

今回の再委託で電通が得る利益について、榑谷氏は、経産省のルールで管理費は10%か電通の一般管理費率の低い方で計上することになっていると説明。電通の一般管理費率は10%を超えており、ルール上10%を適用することになるため「通常実施している業務に比べて低い営業利益になることを意味している」とした。

サービスデザイン推進協議会は、769億円で持続化給付金事業の事務を受託。これを749億円で電通に再委託している。この20億円が「中抜き」ではないかなどの疑念が出ていた。20億円の内訳について同協議会は、出向スタッフ21人の人件費が1.18億円、振込手数料(みずほ銀行・202万件分)が15.55億円、払い出し作業(10名体制)が7200万円などとなっていることを説明した。

資料によると、電通からは、電通ライブに595.7億円、電通国際情報サービスに16.3億円、電通テックに7.8億円、電通東日本に5.5億円の外注がなされた。また、電通ライブからは、約170億円分がパソナに外注されている。

「持続化給付金」は、売り上げが前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、中小法人等の法人は200万円、フリーランスを含む個人事業者は100万円を上限に現金を給付する制度。収入を「雑所得」や「給与所得」としていたフリーランスや今年創業した事業者にも対象を拡大した。

サービスデザイン推進協議会は、同日付で笠原英一代表理事が退任し、大久保裕一氏など3人が新たに代表理事に就任した。大久保氏は電通グループ (4324.T)の執行役員。このほか、浅野和夫・トランス・コスモス (9715.T)執行役員、杉山武志・パソナ常務執行役員が代表理事に就いた。また、持続化給付金事業の執行責任者を務めている平川健司氏が業務執行理事を続ける。

ロイター
2020年6月8日 / 22:32 /
https://jp.reuters.com/article/service-design-idJPKBN23F1OJ