自民党の河井案里参院議員(46)=広島選挙区=の陣営による選挙違反事件で、広島地検は9日、広島県議2人の事務所や自宅を公職選挙法違反の疑いで家宅捜索した。案里氏が初当選した2019年7月の参院選を巡り、夫の克行前法相(57)=自民・衆院広島3区=が複数の県議や首長らに現金を提供し、地検が50人以上の関係者から事情聴取していたことも判明。選挙支援を求める趣旨だった疑いがあるとみて、公選法違反(買収)容疑での立件に向け本格的な捜査に乗り出した。

 関係者によると、捜索を受けたのは元県議会議長の檜山俊宏県議と渡辺典子県議(いずれも自民)。案里氏は県議時代、2人と同じ会派だった。檜山氏は11期目のベテランで、案里氏陣営を支援していた。

 選挙違反事件を巡っては、地検が3月、車上運動員に法定額を超える報酬を支払ったとして、夫妻の秘書2人を同法違反(運動員買収)容疑で逮捕・起訴。渡辺氏は案里氏の依頼で車上運動員を紹介するなどしていたという。地検は今後、2人と案里氏陣営との間で現金の授受がなかったかどうか調べる。

 一方、地検はこれまでに河井夫妻の事務所などを家宅捜索し、陣営側が地方議員らに現金を配ったことを示す物証を押収したとみられる。東京地検などから多数の検事が応援に入っており、広島地検は3月から関係者の一斉聴取を始め、実態解明を進めている。

 複数の議員らによると、参院選の3カ月前にあった県議選や広島市議選(19年4月)などで、克行氏が複数の選挙事務所などに現金入りの封筒を持参。受け取りを拒否したケースが多いとみられるが、県議や市議、首長、自民支持者ら計6人が毎日新聞の取材に現金の授受を認めた。

 こうした現金の授受は政治資金規正法では、政治団体間の寄付として処理できるが、領収書とともに政治資金収支報告書に記載する必要がある。しかし、現金授受を証言した6人は、克行氏から領収書は求められなかった。

 公選法違反(買収)罪の成立には、票の取りまとめの依頼など案里氏の選挙支援の目的があったかが焦点になる。広島地検は今後、現金提供の趣旨に着目して捜査を続ける。【賀有勇、中島昭浩、山本康介】

毎日新聞
2020年4月9日 20時33分
https://mainichi.jp/articles/20200409/k00/00m/040/209000c