安倍政権が検討中の新型コロナの感染拡大に伴う緊急経済対策が、事業規模30兆円超にもかかわらず「効果なし」と悪評が飛び始めている。


 国内外で不要不急の外出禁止令が出されているのに、外食や旅行代金の一部助成が可能な商品券の発行を検討。さらに、和牛の消費を促すための商品券まで検討しているというからワケが分からない。

 さすがにSNSでは、〈旅行はコロナ対策と矛盾する〉〈何で和牛だけ???〉といった声が上がる。匿名掲示板「2ちゃんねる」創設者の西村博之氏も〈バカなの?〉と酷評だ。

■業界団体会長は二階幹事長

 トンチンカンな経済対策のウラには、安倍自民の重鎮の影がチラつく。全国約5600社の会員からなる「全国旅行業協会」の会長は自民党の二階幹事長。今年1月1日付の観光経済新聞で、二階氏は〈新年のあいさつ〉として〈国内旅行の需要喚起を通じた国内観光の振興に努めてまいります〉と明言していた。

 外食業界も安倍自民と距離が近い。外食産業大手で構成される政治団体「外食産業政治研究会」の政治資金収支報告書(2016〜18年分)によると、研究会は国会議員関連の政治団体に「会費」として、毎年696万〜987万5000円を支出(1件1万円未満は除く)。

 いずれの年も、支出の6割超が自民党議員の政治団体に流れている。

 さらに、今月18日には、自民党の食料産業政策委員会(林芳正委員長)など専門部会が、酒類の製造者からなる「酒類業中央団体連絡協議会」から新型コロナ対策の要望を聴取。要望書には〈外食市場の冷え込み、旅行・出張等の減少によって、飲食店やホテル等における酒類販売が大幅に落ち込んでいる(中略)飲料店等への緊急融資を行うなど支援策の早期実施をお願いしたい〉と記されている。

 これだけの献金、要望を受けている安倍自民は“パトロン”の方を向いて経済対策を練っているに違いない。ピント外れな「和牛商品券」もその一環だろう。

「政府は日米貿易協定で牛肉の関税引き下げをのまされ、昨年は台風被害で農業・畜産は大ダメージを受けた。農業・畜産には古くからの自民党支持者が多いですから、『和牛商品券』も支援者対策でしょう。本来なら、新型コロナの抗ウイルス薬の研究などに予算を回すべき。政権与党の支持獲得のための経済対策など許されません」(経済評論家・斎藤満氏)

 この緊急事態にあまりにも不謹慎だ。

日刊ゲンダイ
2020/03/27 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/270990/