もはや、東京市場は底が抜けた状況だ。3月に入ってから4300円も下落し、17日の日経平均株価も1万7011円と、1万7000円割れ目前である。

 深刻なのは、国民の「年金資産」を運営しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も大損していることだ。

 GPIFは国民の年金保険料160兆円を運用し、そのうち50%を国内外の株式に投じている。株価が下落すれば、当然、国民の年金資金も大きく毀損することになる。これまでもGPIFは、株安に襲われるたびに年金資産を減らしてきた。2015年7〜9月期は8兆円、18年10〜12月期は14兆円もの運用損を出している。今回の株価暴落でも、大損しているのは間違いない。

 はたして、どのくらいの損失を出しているのか。17日の衆院厚労委で、無所属の山井和則議員が、衝撃的な試算を公表している。なんと、3月16日時点(平均株価1万7002円)で、22兆1000億円もの運用損を出しているというのだ。過去最大の損失額である。

 GPIFの運用失敗は、他人事ではない。国民が受け取る年金が大幅にカットされるからだ。安倍首相は16年2月、「想定の利益が出ないなら当然、支払いに影響する。給付にたえる状況にない場合は給付で調整するしかない」と、衆院予算委でハッキリ答弁している。

 しかし、ただでさえ国民は年金を減らされているのに、GPIFの運用失敗のツケまで回されたら、国民はタマらない。だいたい、GPIFがここまで株価下落の影響を受けるのも、安倍政権が大量に株を買わせてきたからだ。従来、GPIFが株式投資するのは全体の24%だったのに、株価を上げたい安倍政権が14年、50%に引き上げてしまった。しかも、この先、株価は1万6000円、1万5000円とさらに下落していく可能性が高い。そうなれば年金資産も減っていく。

 国会質問した山井議員がこう言う。

「一番の問題は、政府もGPIFも説明責任を果たそうとしないことです。GPIFが運用している資金は国民から預かったものです。なのに、運用状況をスピーディーに公開しない。1〜3月期の運用実績は、7月に公開するの一点張りです。これでは国民の年金不信、年金不安は強まる一方です」

 また、国民の年金が消えることになる。

日刊ゲンダイ
2020/03/18 14:50 
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