安倍晋三首相は12日の衆院予算委員会で、立憲民主党の辻元清美氏が質問を終えた際、「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばした。野党が猛抗議し、審議は一時紛糾。首相は、次に質問に立った逢坂誠二氏に対し「ここは一方的にののしる場なのか。それでは質疑は無意味になってしまうと思ったから申し上げた」と述べた。立憲の枝野幸男代表は党会合で「かつて(国会で)バカヤローと言って衆院を解散した首相がいたが、それに匹敵する暴言だ」と強く批判した。主な辻元氏の最後の発言と逢坂氏とのやり取りは次の通り。

 <辻元氏の発言>

 総理、最後に申し上げる。「タイは頭から腐る」という言葉、ご存じですか。これは英語とかロシア語でもある。死んだ魚の鮮度は魚の頭の状態から判断できる。従って、社会、国、企業などの上層部が腐敗していると、残りもすぐに腐っていく。総理が桜とか加計とか森友とか疑惑まみれと言われているから、それに引きずられるように官僚の示しがつかない。官僚の皆さん、かわいそうだ。心痛めてる官僚の方、たくさんいると思う。子どもの教育にも悪い。長期政権だからじゃないですよ。最初からやっているんだから、桜を見る会も。森友だって、総理大臣になる前から講演に行こうとしていた。

 ここまで来たら、原因はタイの頭。頭を代えるしかないのではないか。(首相は)私の手で憲法改正を成し遂げたいと(言っている)。総理の手で成し遂げることは、総理自身の幕引きだということを申し上げて終わる。

■首相のヤジで委員会室が騒然

 政府側の自席に座っていた首相が「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばす

 辻元氏が「誰が言ったのか」と反発し、野党理事が集まり、審議を止めるよう委員長に要求

 次の質問者の逢坂氏を指名していた棚橋泰文予算委員長は「私は(指名の)発言をしていましたから、(ヤジを)聞いていません」「逢坂さんの質問だ」「私聞いてないって言ってるでしょ」「勝手な言い方で止めるわけにはいかない」などと受け付けず、審議を続行させる

<首相と逢坂氏のやり取り>

 逢坂氏 確認させていただくが、さきほど総理は「意味のない質問」とおっしゃったのか。事実だけ確認させてください。

 首相 最後のところで、辻元委員がずっと私に質問ではなくて、罵詈雑言(ばりぞうごん)の連続だった。頭から腐ると、腐ってる本体が私であると。これを言い続けた。政策に関わりなく。私に反論する機会を与えずに繰り返された。テレビ(中継)つきで。それで終えられた後、それはあまりにも、こんなやり取りじゃ無意味じゃないかということを申し上げた。当然、そう思うじゃないですか。一方的にここでののしる。ここは質疑の場であって、一方的にののしる場なのか? 私はそうだとは思わない。私は、それでは質疑は無意味になってしまうと思ったから、これじゃ無意味じゃないかと申し上げたわけだ。

 逢坂氏 総理が「意味のない質問だ」と言ったのは事実だと、お認めをいただいた。私は、辻元さんの言ったことは当たっていると思う。総理がでたらめやるから、国全体におかしなことがいっぱい広がってる。総理から腐っていって、体全体にその腐りが回っていくという指摘だったのではないかと思う。それを意味がないと。そういうことをちゃんと真摯(しんし)に受け止める姿勢が必要なのではないか。私はそのことを指摘させていただきたい。

毎日新聞
2020年2月13日 07時45分
https://mainichi.jp/articles/20200212/k00/00m/010/308000c