新型コロナウイルスの影響が広がる中国で、日本から続々と届く支援をメディアが連日手厚く報じている。在日中国大使館は日本政府や地方自治体、企業などから計約272万枚のマスクや、約38万着の手袋などが寄付されたとの集計をホームページで公表。日本から届く支援物資に添えられていた「山川異域 風月同天」という漢詩の一節も話題を呼んでいる。

 同大使館の7日までの集計によると、日本から中国へ送られた寄付はマスクや手袋のほか、医療現場で不足している防護服約15万着、防護メガネ約7万5千個に加え、CT検査の設備、体温計、消毒液など。企業や民間団体からの寄付がマスクでおよそ6割、手袋で7割以上を占めるという。民間を含む日本からの寄付金は約2889万元(約4億5千万円)に上るという。

 日本の支援についての報道やSNSの投稿が流れる際、「山川異域 風月同天」と記されることが多い。この一節は、中国語検定「HSK」の事務局を務める日本青少年育成協会(東京都)が1月下旬から湖北省内の大学などに送り始めたマスクや体温計の箱に毎回、書かれている。

 約1300年前に天武天皇の孫の長屋王が、唐の高僧・鑑真に宛てたとされ、「住む場所は異なろうとも、風月の営みは同じ空の下でつながっている」との意味。このメッセージに心を動かされた鑑真が来日を決めたと伝えられている。

 同協会の本田恵三事務局長(58)は「今の私たちの気持ちを伝えるのに、ふさわしい言葉だと思った」と話す。中国のSNS上にはこの漢詩を解説する動画などが投稿され、「(鑑真を動かした漢詩が)再び中国の人の心を動かした」「1300年の時を隔てて私も泣きました」などの声が広がっているほか、中国人が武漢市で患者に対応する医師らに送るエールとしても使われている。

朝日新聞
2020年2月10日18時26分
https://www.asahi.com/articles/ASN2B5T7VN2BUHBI00N.html