カジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡る汚職事件で、日本参入を目指していた中国企業「500ドットコム」側が衆院議員の秋元司容疑者のみならず、複数議員にカネを渡していたことが発覚。日本維新の会の下地幹郎衆院議員にも100万円が渡っていた疑惑が浮上し、維新が大阪で推進するIR構想への“飛び火”は確実だ。

 カジノ汚職事件で「維新」の名が挙がったのは今回が初めてではない。事件の「キーマン」紺野昌彦容疑者の実父が維新議員であることも分かっている。維新が大阪で進めるIRのイメージはガタ落ちだが、もっとヤバいのは維新とドットコム社との関係性。大阪IR構想に、ドットコム社が一枚かんだ可能性がある。両者をつなぐのは、2010年4月発足のNPO法人「依存学推進協議会」(京都市)だ。

 ドットコム社が17年7月に日本法人を設立した直後の10月、同社と協議会はシンポジウムを共催。ギャンブル依存症対策に関する共同研究を始めることで合意した。オンラインカジノを運営するドットコム社は、独自開発したビッグデータや顔認証システムを利用した依存症予防システムをアピールし、カジノ利用者の性別や年齢など数千万人分のデータ提供を提案。協議会に年数十万円の協賛金を支払い、シンポジウムの開催経費も負担した。

■依存症対策で中国企業と「接点」

 問題は、この協議会の谷岡一郎副理事長と勝見博光理事は、大阪府・市が17年3月に設置した「IR推進会議」の委員だったこと。谷岡氏は19年2月まで、勝見氏は18年2月まで委員を務めていたのだ。

 ドットコム社推奨のシステムが実際に“採用”されたかは不明だが、昨年2月にまとめられた大阪IR構想案には、顔認証システムによる入場者管理体制が盛り込まれている。維新代表の松井一郎大阪市長は事件について「秋元議員個人のオレオレ詐欺」と素知らぬ顔だったが、特捜部の捜査対象企業と推進会議委員との接点が浮上した以上、あいまいなままで済まされるはずがない。

 カジノ問題に詳しいジャーナリストの横田一氏が言う。

「公明党の慎重論が影響し、IRを推進する上で依存症対策は必須です。対策なしに推進は不可能と言っても過言ではない。ドットコム社がそこに目を付け、大阪IR事業への関与を画策した可能性が考えられます。府・市は一度立ち止まって徹底検証すべきでしょう」

 20年代半ばに開業が見込まれる大阪IR。“無傷”のままオープンは無理だ。

日刊ゲンダイ
20/01/05 06:00
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