愛知県で開かれた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」を巡り、同県の大村秀章知事は24日、東京都内の日本記者クラブで記者会見した。次回の開催について、「議会答弁で次のトリエンナーレに向けて改善をしたいと申し上げている」などと述べ、意欲を見せた。

 不自由展は、慰安婦を表現した少女像や昭和天皇の肖像群を含む版画が燃える映像などの展示を巡り、脅迫を含む大量の抗議を受け、開幕3日でいったん中止に。会期末の7日間だけ再開された。

 有識者による県の検討委員会は今月18日に最終報告を公表。中止については「差し迫った危険のもとの判断でやむを得ず、表現の自由の不当な制限には当たらない」とする一方、「芸術監督に起因するリスクを回避・軽減する仕組みが用意されていなかった」などとして津田大介芸術監督を含む運営側の問題点を指摘した。

 この日の会見で最終報告の内容を説明した大村氏は、芸術祭実行委員会会長でもある自らの立場を「金は出しても口は出さない」と主張。展示を巡って激しい対立が生じたことを踏まえ、「みんなで包み込んでいくような分厚い市民社会をもう一度作らないといけない。自分の政治活動の旗印に多様性を掲げていく」と訴えた。ただ、トリエンナーレのホームページの取材申し込みに「掲載や放送前に原稿を確認する」とあったことを問われると、「承知していないので担当者に聞いてみたい」と述べた。

 大村氏に先立ち、津田氏も同クラブで会見。最終報告について「展示の仕方やキュレーション(展示実施)の部分的な瑕疵(かし)や不備を指摘するだけに終わり、問題の本質を覆い隠すことに結果的になっている」と主張した。(岩尾真宏)

朝日新聞
2019年12月24日21時04分
https://www.asahi.com/articles/ASMDS52WMMDSOIPE010.html