日米貿易協定で先送りとなった日本から米国への輸出時にかかる自動車関連の関税撤廃が実現しない場合、米国に納める関税の削減額はどうなるのか。朝日新聞と民間シンクタンクが公表資料をもとに独自に試算したところ、260億円前後との結果が出た。政府が説明する全体の削減額の1割ほどに減り、米国からの輸出時の削減額とする約1千億円を大きく下回る。

■撤廃は不透明

 交渉トップを務めた茂木敏充外相が、11月6日の衆院予算委員会で「日米双方にとってウィンウィン(両者が勝つ)な合意」と答弁するなど、政府は成果を強調している。だが、自動車関連関税の撤廃時期を協議する次の交渉を開く機運が日米ともに薄れ、撤廃は不透明感が増している。日本にとって著しく不利な協定となる可能性がある。

 政府が10月18日に公表した協定発効後の関税削減額の説明資料によると、米国に納めた関税は2018年に約2600億円。政府はこの実績から、関税の削減額は2128億円と試算した。一方、輸入の際に米国から受け取る関税額は1030億円減ると、18年度の実績(約1570億円)からはじいた。このときの説明会で、内閣官房の渋谷和久・政策調整統括官は、この数字を引き合いに「倍ぐらいの(日本の)勝ち越しだ」とも話した。

 ただ、この試算には、継続協議となった日本から輸出する乗用車(関税率2.5%)や自動車部品(主に2.5%)の関税撤廃も含めている。そこで、朝日新聞は、通商問題に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの中田一良・主任研究員とともに、自動車関連を除いた日本の関税削減額を米国の2種類の公表資料から独自に試算した。結果は2.4億ドル(260億円)前後となった。

朝日新聞
2019年11月17日06時00分
https://www.asahi.com/articles/ASMCH6RPZMCHUTFK02S.html
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