安倍晋三首相主催の「桜を見る会」の来年度の開催が急きょ中止になった。不透明な招待基準への批判が高まり、首相事務所の関与疑惑が明るみに出た末の方針転換。「(このままでは)ぼろが出るからじゃないか」。不信感は収まりそうにない。

 毎年4月の桜を見る会で会場となる東京・新宿御苑。13日夜、近くを歩いていた都内の病院職員の女性(46)は突然の中止決定に「え、そうなんですか」と驚きの表情を浮かべた。最近の報道で、なぜ招待されたのかよく分からない人まで参加していると知った。「あり方を見直すのはいい」と話した。

 桜を見る会の運営を巡っては、8日の国会質疑を通じ、具体的な招待基準が不明確だったり、参加者が公表されていなかったりする点への批判が高まった。

 大阪市中央区のオフィス街で知人といた大阪府枚方市の会社員女性(60)は「責められてやめるのがあやしい。何かぼろが出るからじゃないか」と語った。首相の地元から多数参加していたことについて「招待者にちゃんとした基準がないのはおかしい」とあきれる。堺市の主婦(54)も「自民党の予算なら構わないけど、税金を使っているのが腑(ふ)に落ちない」と疑問を口にする。「地元の人を呼ぶのが慣例化していたのなら、政治家としての質の問題だ」と語った。

 安倍首相の地元からも批判があがった。首相の後援会員で、今年初めて桜を見る会に参加した山口県下関市の男性は「会場で振る舞われる食事や飲み物もサービス過剰だと思った」と言う。「台風など災害で苦しんでいる人がいるのに、莫大(ばくだい)な予算を確保して開催するのは疑問だ。休んだ方がいい」と話した。

 一方で、意義があるとみる参加者もいる。

 長く国際交流に携わり、5年ほど前から招待されてきた都内の女性(41)は「中止はとても残念」と話す。芸能人だけでなく、各国の大使館関係者など多くの外国人参加者もいて、「桜をめでるという日本の伝統文化を世界に知ってもらう意義のある会」と感じていた。参加者が年々増えている気はしたといい、「国民が納得できるようにきちんと説明してほしい。私は招待者の名簿が公表されても全くかまわない」と話した。

 1990年代から20回以上、桜を見る会に参加してきたという放送プロデューサーのデーブ・スペクターさんは「美しい桜や芸能人を見られる楽しい会。フェアな方法を考えていつか再開して欲しい」と求めたうえで、首相後援会のメンバーが参加していた点は「票につなげるためだと非難されても仕方ない」と指摘した。

朝日新聞
2019年11月13日21時34分
https://www.asahi.com/articles/ASMCF5R25MCFUTIL03W.html